月1回の「週休3日制」の効果、売上は過去最高に 老舗黒板メーカーのやり方
「働き方改革」の必要性が叫ばれるようになって久しい。ノー残業デーやフレックスタイム制など各社さまざまな制度を打ち立てているが、中でも注目度が高いのは「週休3日制」だろう。 【画像で見る】サカワが採用した「給与維持型」週休3日制の概要、特別休暇を導入したことで、普段の業務への意識は変わったか?(計2枚) 週休3日制は主に「給与減少型」「労働時間維持型」「給与維持型」の3パターンに分類される。多くの従業員は、休みが増えて給与も維持という理想形の「給与維持型」を望むが、事業成長などに対する影響を懸念し、踏み出せない経営者も少なくないだろう。 そんな状況で、独自の週休3日制を導入し、着実に成果を出している企業がある。100年以上続く、老舗黒板メーカーのサカワ(愛媛県東温市)だ。 「業績が低下したり、トラブルが起きたり、有休消化率が落ちたりしたらやめる」と全社員に宣言し、2023年1~3月のテスト期間を経て、2023年4月から本格実施している。 サカワが採用したのは、全社員を対象にした月1回の週休3日制だ。休みは水曜日に固定。第1水曜日に休むチームと第3水曜日に休むチームの2チーム制にして、全社の休業日とすることは避けた。繁忙月に当たる1、2、5、8月は適用されないが、給与維持型で運用する。 効果も出てきている。導入初年度に当たる2023年は、過去最高売り上げを記録。社員の仕事に対する意識の変化も見られているという。家族や自分のための時間を確保できた社員も多く、独自の週休3日制に対する社員の満足度は高い。 独自の週休3日制を約1年半運用した効果について、サカワ4代目社長・坂和寿忠氏に話を聞いた。
社員からは「本当にやるんですか?」の声も 独自の週休3日制の効果は
「コロナ禍を経て、会社に来て週40時間働けばよいという考えが薄れてきたと思います。少ない労力で大きな利益を生むには労働生産性の向上が不可欠。しかし『これをやったから生産性が上がりました』と効果検証をするのは難しい。そこで半強制的に生産性を上げる方法がないかなと考えて、月1回の週休3日制にたどり着きました」 「『給与減少型』『労働時間維持型』は当社には合わないと思いました。働き盛りのメンバーに休みを取らせ、その分の給与は引くという会社都合でのルールを強いるのは難しいです。一方で、1日の労働時間が増えると、家庭やプライベートの時間を削らなくてはいけない。しんどいですよね」 給与維持型の場合、働く時間は減るが給与は今まで通り。そこに「業績が低下したらやめる」という条件が付与されることで、短くなった労働時間内でどう売り上げや利益を上げていくかという生産性向上に社員の目が向くようにした。 運用から1年以上経ち、社内アンケートでは75%が「普段の業務への意識が変わった」と回答。具体的には「特別休暇のため短期的に業務をちゃんと終わらせる経験を通じて、身動きが取れないスケジュールの前日や金曜日などにもその意識を持つようになった」「週5タスクを割り当てていたが、休暇があることで同じ部署内へ引継ぎが必要になる。ある意味チームワーク力が向上した」といった意見がみられた。 前述の回答にあるように、業務の属人化の解消にもつながったという。これまでは個人の中に情報が閉じていたが、メンバーが休みのタイミングでもチーム内で業務が滞らないようシステムを導入。情報を集約化し、誰でも閲覧できるようにした。 「黒板業界は土曜日も働く、年間休日108日の会社もまだ存在します。当社が休むことでお客さんの仕事に影響が出たり、協力会社に迷惑をかけないように意識しました。休みを増やした分、受注率を上げる必要があるという考えを全員が持ったことで、業務の属人化を解消する動きが社内でどんどん広がっていきました」 月1の週休3日制の案を発表したときには、社員から「本当にやるんですか?」という心配の声もあった。しかし、導入から約半年後の経営発表会では、すでに社員の意識改革が見られた。「会社の業績目標を達成しないと、この良い制度が終わってしまう」ことを理解し、会社の成長にどう貢献できるかを各々が考えている様子が伝わったという。 「わたしから生産性向上に向けた声かけはしていませんが、これまで役員や部長レイヤーで強く持っていた数字に対する意識が各チームにも芽生え始めた実感はあります。会社の目標を踏まえて、自部署のKPIを設定し、それを達成するためにどう動くかを能動的に考えてくれています」