大坂なおみも投資する全米熱狂「ピックルボール」の全貌。ソフトテニス王者・船水雄太、日本人初挑戦の意義
特徴は「誰でもすぐできる」。ラリーができるまでたったの30~60分
ピックルボールを簡潔に言い表すなら、いわゆるラケットスポーツであり、ネットを挟んで打ち合う様はテニスに近い。 テニスはアメリカで人気があり、なじみ深いスポーツではあるが、なぜそんなテニスに近しいピックルボールの人気が爆発しているのか? 理由の一つに、「誰でもすぐにできるようになる」ことが挙げられる。 先ほどテニスに近いと言ったが、コートはテニスに比べて狭く、バドミントンのダブルスコートと同じ広さだ。ボールはプラスチック製ではねにくく、穴が開いているためバドミントンのように途中で減速する。パドル(ラケット)もテニスより小さく、卓球のラケットを一回り大きくした程度だ。 テニスをやったことのある人は分かるだろうが、始めたばかりのころは意外とボールがラケットの面にうまく当たらない。コートは広く、ボールは思ったよりもはねてくるため、打点に入るだけでも一苦労だ。さらに、ラケットが長くて打点が自分の体から離れてしまうのも、“打つ”という感覚をつかむのを難しくしている。 対するピックルボールは、ラケットが小さくて“手のひら”感覚で打ちやすく、コートもボールもテニスのとっつきにくさを軽減したような仕様になっている。ラリーができるようになるまで、テニスは何カ月もかかってしまうが、ピックルボールであれば30~60分ほどでできるようになる。
戦術的な駆け引きが醍醐味。テニス、バドミントン、卓球の“好いとこ取り”
ピックルボールの最大の特長である“ラリーの楽しさ“を生かせるような独自のルールも存在する。 まず、サーブはアンダーハンドで打たなければならず、テニスのようにビッグサーブ一発でポイントを取ることはできない。 サーブ&ボレーが禁じられているのも特徴だ(「ツーバウンドルール」)。サーブの後、相手コートでワンバウンド、レシーバーが打ち返して自陣コートでワンバウンド、合計ツーバウンドして以降、ボレー等のノーバウンドで打つことが許される。これもラリーを楽しむためのルールといえるだろう。 「ノンボレーゾーン」の存在もユニークだ。その名の通り、ボレーをしてはいけない(ノーバウンドで打ってはいけない)ゾーンで、ネットから2.13m(7フィート)以内と定められている。テニスであれば、浮き球をネット際まで詰めてポイントを取れるような場面でも、ピックルボールではそれができない。ノンボレーゾーンに足を踏み入れずにボレーをするか、ワンバウンドするまで待たなくてはならず、このルールもまたラリーが長く続く要因となっている。 ラリーが長く続く分、いかに相手のバランスや陣形を崩すかという戦術的な駆け引きが醍醐味(だいごみ)だ。まさに、テニス、バドミントン、卓球の“好いとこ取り”をしてプラスアルファしたようなスポーツといえるだろう。 運動として激し過ぎず、かといって緩過ぎず、適度な強度でやれることも、3世代で楽しむことができる生涯スポーツとして、高齢化の進むアメリカで人気が沸騰している理由だ。