クリニックの受付中、患者さんから「待ち時間が長すぎる!」「料金なんて払わない」とクレームが! 主任は「我慢して」と言うけれど、“損害賠償請求”になる可能性も!? 誤解の多い「応招義務」とあわせて解説
厚生労働省はじめ関係団体、医療施設などの対策を参考にしよう
正当理由があれば応招義務は否定されます。これを前提に厚生労働省、関係機関等で、ペイハラ対策・カスハラ対策が公表されています。ペイハラ対策に悩んでいる場合は、以下を参考にしてみてください。 ■基本方針 患者やその家族等からの暴力や暴言、不当要求等の著しい迷惑行為などには、医療機関として毅然とした態度で臨み、医療従事者が守られていると感じ、安心して仕事ができる環境づくりに努める。悪質・不当な要求は、話を十分に聞くほど要求がエスカレートするため、時間をかけるのでなく、時間を決めて対応するのがポイント。 ■社会通念上不相当な言動の例 ・身体的な攻撃(暴行、傷害) ・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言) ・土下座の要求 ・継続的、執拗な言動 ・拘束的(不退去、居座り、監禁)な行動 ・性的な言動 ・商品交換や金銭保証の要求 ■予防策 ・組織の方針をポスター、医院の案内、ホームページ等で明示 ・トラブルの多い内容には説明文書などを準備 ■発生時の対応 ・窓口を一本化、複数人で組織的対応 ・毅然と対応。会話は最小限、即答しない、約束しない、謝罪しない ・3つのカエルでエスカレーション防止(場所を変える、人を変える、時間を変える) ・違法行為には法的措置(威力業務妨害、不退去への警告、警察通報など) ■事後対応 ・記録・証拠を正確に残し、弁護士と相談 ・再発防止策の検討 図表2
日本産婦人科医会 悪質・不当要求対策より抜粋
「応招義務」を誤解せず、真の患者保護・スタッフ保護を貫くこと
先述の通り「応招義務」を盾にペイハラ当事者にあいまいな姿勢をとることは許されません。ペイハラ対応に手を取られて、正当な医療行為などが妨げられることこそ問題です。 また、安易な解決を求めて「多少の金銭負担ならやむを得ない」などと考えるのは禁物です。ペイハラ当事者を増長させ、また別のペイハラを生む可能性が十分にあります。 ペイハラ対応の準備を整え、いざというときには毅然と対応しましょう。また、具体的な対応方法を院内で話し合って明確にしておくことも重要です。それが真の患者保護につながり、医療機関等としての社会的責任を果たすことになります。 医療スタッフとしても安心して誇りを持って仕事ができる職場作りにつながっていくのではないでしょうか。 出典 パーソル総合研究所 カスタマーハラスメントに関する定量調査 日本産婦人科医会 悪質・不当要求対策 執筆者:玉上信明 社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
ファイナンシャルフィールド編集部