謎深まる諏訪湖のワカサギ大量死 原因を本格究明へ
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ワカサギの大量死などが問題化している長野県の諏訪湖の水質改善について長野県は18日、専門家による検討会を開き、本格的な対策に乗り出しました。検討会では、さまざまな原因が推定されましたが、特定はできず。今後多くのデータを投入するシミュレーションで着実に原因解明を進めることになりました。 【写真】2度の大雪が誤算だった「かいぼり」 井の頭公園100年に向け実施
長野県「湖底が貧酸素状態にある」
諏訪湖では今年7月にワカサギが大量死。死んだのは数十万匹とも諏訪湖の大半ともいわれ、全滅のおそれも取りざたされました。湖水の酸欠があったとの見方があるものの、その原因はいまだに不明。漁業者などへの影響は大きく、原因解明と対策が強く求められています。 会議は沖野外輝夫・信大理学部名誉教授(生態学)を委員長に、宮原裕一・信大山岳科学研究所准教授、大塚孝一・長野県環境保全研究所技師、傳田正利・国交省水環境研究グループ主任研究員、山室真澄・東大大学院教授、渡邊康正・環境省水環境課課長ら8人の専門家が参加。 県側は諏訪湖の湖底が「貧酸素」状態にあるとして、応急的な短期の対策と長期の対策、対策を優先すべき場所(沿岸域、湖心など)、機械的な貧酸素対策の有効性や影響――などを論点として挙げました。 次に、大量に繁茂している水草のヒシの刈り取りや抑制方法、刈り取り後の影響を検討課題として提示。生態系の問題としてはシジミなどの資源回復、植生の保全を進める場合の優先すべき場所や方法が課題になるとしました。
貧酸素水域? 菌類? 有害物質?
ワカサギなどの大量死の原因として(1)貧酸素水域の拡大、(2)菌類、バクテリア、プランクトンなどの影響、(3)アンモニア性窒素などの有害物質の影響――の3点の可能性を提示。 これらを関係させて、諏訪湖の底泥の嫌気化→アンモニア性窒素溶出→植物プランクトン枯死?→日照不足、光合成による酸素供給の減少→溶存酸素量(DO)低下(酸素がない湖底の水と上の水の混合が起きる)→酸欠?→動物プランクトン死亡→えさ不足→ワカサギなどの死亡(菌類、バクテリアの影響)――の推定関連図を示しました。 ただ、貧酸素水については、「回遊魚であるワカサギがなぜ貧酸素水から逃げられなかったのか」「ブラックバスやエビなどの魚類は死んでいない」「死んだワカサギなどを発見した時点とDO低下時との間にタイムラグが生じている」とする3点の疑問を投げかけています。 委員からは「諏訪湖の伏流水が止まって湖底にある貧酸素水が動きにくくなったのではないか」「ヒシを取るための手引を作って地域一体となって取り組むことが大切」「諏訪湖の管理面から、高度成長期以前はなぜ問題がなかったのか調べる必要がある」などの意見が出ていました。