【漫画家に聞く】厳しい冬を迎えた孤独なネコの行末は……SNS漫画『機関車に暮らすネコ』にほっこり
とある駅に迷い込んだネコの日常を描いた漫画『機関車に暮らすネコ』が2024年12月にXなどのSNSで投稿された。蒸気機関車や駅に集う人々に怖さを感じるなか、季節は肌寒さを覚える頃になりーー。孤独なネコに待ち受けている結末とは。 【漫画】厳しい冬を迎えた孤独なネコの行末は……『機関車に暮らすネコ』 物語や描線からたしかな温もりを覚える本作の作者・すばるひよえさん(@cigohachi458)は蒸気機関車の保存活動に参加している人物だ。本作を創作したきっかけ、蒸気機関車への思いなど、話を聞いた。(あんどうまこと) ーー本作を創作したきっかけを教えてください。 すばるひよえ(以下、すばる):本作は主人公のネコを描こうと思い創作した作品です。動物は言葉を話せないので、感情をセリフで描くことは難しいと思っていました。そのためサイレント漫画という形式を用いて、表情やしぐさで主人公の感情が読者に伝わるように工夫しました。 ーー感情を表現するためにどのようなことを意識した? すばる:ネコの動きをなるべくオーバーにすることを意識しました。実際のネコを観察してみると、たとえば警戒してるときは毛を逆立てたり、怖い表情になったり。逆にリラックスしてるときは、尻尾をパタパタとさせながら寝そべっていたりーー。感情に合わせた動きを、それぞれにメリハリをつけて描きました。 ーー本作で描かれたネコは飼い猫というよりも、ノラ猫に近しい印象を覚えました。 すばる:今まで私が実際に見たネコのほとんどがノラ猫だったからだと思います。逆に家庭で飼われているネコと会う機会はあまりなかったです。 本作の主人公のネコも、おそらく駅に来る前はほとんど人と接することがなかったと思います。一匹狼で生きてきた感じのネコということを意識しながら描きました。 ーー本作はSNSで投稿している鉄道漫画シリーズのスピンオフ作品として描かれた漫画だと伺いました。 すばる:そうですね。本シリーズは「釜石線」という鉄道で走っていた蒸気機関車に感動して、その魅力を多くの人に伝えられたらいいなと思い描きはじめた漫画です。 蒸気機関車は日本中でたくさん走っていたのですが、徐々にその姿は消えてしまいました。ただ現在も蒸気機関車を残そうという活動があり、私もその活動に参加しています。 本作の主人公をネコにしたことも、動物が主人公なら蒸気機関車に興味のない人も読みやすいかと思ったからです。 ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは? すばる:19ページ目、復活した蒸気機関車とネコがホームで再会するシーンです。3コマしかない1ページですが、どこまで描き込みをするか吟味しながら描いたページでした。蒸気機関車がホームに入ってくる様子、ネコの毛並みの感じなど、お気に入りのページです。 ーー本作のシリーズ作品などは「コミックマーケット」などの同人誌即売会で出展されていると伺いました。 すばる:私が参加している蒸気機関車の保存活動は、維持費を寄付で集めないといけなくて……。そんななか寄付を募るチャリティー活動として、私の描いた漫画や絵はがきの売り上げを蒸気機関車の修繕費に充てています。 私が漫画を描きはじめたきっかけも蒸気機関車でした。これまで細々と作品を描いたりしていたのですが、蒸気機関車と出会い、蒸気機関車を題材にした漫画が少なかったため本格的に作品を描きはじめました。2018年から現在に至るまで、蒸気機関車や鉄道のことを勉強しながら創作をつづけています。 ーー蒸気機関車の保存活動と漫画の創作は密接な関係にあるのですね。 すばる:蒸気機関車の保存活動の担い手も高齢化しつつあり、若者側の立場として貢献できることはないかと思い、漫画を描いています。ただ活動に参加することで蒸気機関車を間近で見られるため、作画資料として最高のものを得ることができ、作品のクオリティを高めるためにもありがたいです。 ーー今後の活動について教えてください。 すばる:これからも蒸気機関車をテーマにした作品を描いていきたいです。また本作はネコを描く機会になったので、蒸気機関車だけでなく動物を題材にした作品も描きたいですね。蒸気機関車や動物について興味を抱くきっかけとなるような作品を描きつづけていきたいと思います。
あんどうまこと