Skateboarding Unveiled vol.9 ~フィッシュアイレンズ~
スケートボード以外の撮影現場では、「普段は何を撮ってるんですか?」と聞かれることがある。 自分のキャリアなら、そこで「スケートボードです」と答えるのは、ごく自然なことだ。 すると、時にはこんなことも聞かれる。「じゃあフィッシュアイとか使ってるんですか?」と。
フィッシュアイレンズはスケートボード界のスタンダード
フィッシュアイは撮影時にカメラへ取り付けるレンズのことで、魚眼レンズと呼ばれているもの。 一般的には特殊レンズに分類されあまり見ることはないのだが、それがスケートボードの現場だとスタンダードなレンズとなり、多くのフォトグラファー、フィルマー、スケーターに愛されている面白い立ち位置の存在なのだ。 そこで今回は、「なぜスケートボードの現場でフィッシュアイが使われるのか?」をテーマに進めていきたい。 このように問われたら、スケーターや写真好きの多くは「迫力ある写真が撮れるから」と答えるのではないだろうか。 でも何がどうなってこうなるから、迫力あるスケートボードの写真が撮れるんだとまで定義づけられる人は、そこまで多くないのではないだろうか。 そもそもフィッシュアイレンズは広い範囲を撮影できるという意味で超広角レンズの一種になるのだが、超広角レンズよりも更に広く写すことができる。なおかつ通常のレンズは被写体を極力歪ませずに描写することを目指しているのに対し、フィッシュアイレンズは歪ませることで広い範囲を描写するため、被写体にある直線のほとんどが曲線として描かれるという特徴があるのだ。 ではそこを理解してもらった上で、スケートボード写真における暗黙のルール「アプローチと着地点を一枚に収める」にのっとって撮影した以下の2枚の写真を見比べてみよう。 トリックはハンドレールでのバックサイドボードスライドになる。
超広角とフィッシュアイの違い
まずは16mmの超広角レンズで撮影した写真から。この類いのレンズは狭い室内を広く写したり、周辺の歪みを利用して景色に迫力を出すために使われることが多い。近くに寄って広く写し込む必要があるので、画角に入りきるように被写体の周囲を画面の外から引っ張ったような写真になっているのがわかるだろうか。 なぜこのような写りになるのかというと、広角レンズは中心から外に向かうにつれてどうしても歪みが出てしまい、写す範囲が広くなればなるほど歪みは大きくなっていく。そこでレンズ内部に形や大きさの異なるたくさんのレンズを使い、できる限りの修正をして真っすぐにしているのだ。ただし歪みを修正すると、写真の端まで同じ大きさに調整しきれず大きく写ってしまうというわけ。 つまり人の顔を広角レンズの周辺部分に持ってくると顔も大きく伸びてしまうので、一番見せたいスケーターは中央付近に配置してあげる必要があるのだ。広く写すことで雄大な雰囲気が出るし、使い方によってはすごく面白いレンズではあるが、同じ超広角でもフィッシュアイで撮るとどうなるだろうか。