有村架純×坂口健太郎 Netflixシリーズ『さよならのつづき』インタビュー
有村:すごい慎重だったよね、私たち。 坂口:うん。こういう題材をやるからには、ちゃんと踏みしめていかなきゃ。本当の「大丈夫」に至るまでの試行錯誤は必要だと思ったので、一歩一歩進んでいった感じでした。あと、これは完全に余談ですけど、僕が撮影中に一番緊張したシーンは、台風の中、大学の前で雨宿りしているさえ子を走って迎えに行く時。日本に数えるほどしかない、超大型扇風機を2台稼働させているんですけど、本当に吹っ飛ぶかと思った(笑)。 有村:なんか、ドリフをやってるのかと思うくらいだった(笑)。 坂口:スタッフの方たちがみんな、ビショビショになりながら雨を作ってくれて。だから現場に対して、どうしたって愛情が湧くんですよね。もちろん摩擦が生まれる瞬間もあるんですけど、基本的には熱量のある意見を交わしながら、いい空気感で撮影に臨めました。 ――物語の舞台として小樽とハワイが登場し、北国と南の島という対照的な景色がストーリーをいろどります。役を演じる上で、ロケーションから受けた影響はありますか? 有村:北海道ではまず3カ月過ごし、冬のロケにも1カ月ほど行って。ハワイパートの撮影をしたニュージーランドにも1カ月行ったんですけど、ほぼ住んでいるみたいな感じ。ホテル住まいで自宅に帰ることがないから、作品の世界で生活している感覚に自然となれちゃう。ニュージーランドでは広大な景色を前にして、心が開かれていく感じがしました。一方の小樽ではよく電車に揺られましたけど、それが自分と向かい合うためのいい時間になったり。今回もロケーションがもつ力に助けられました。それがないと、逆に難しいなと。 坂口:全然話が変わるんですけど、前にロシアの作家、チェーホフの戯曲『かもめ』の舞台に出たんです。その時にある方が話してくれたことなんですけど、ロシア文学が名作揃いなのって、極寒の冬に家にこもっていると、みんな書くしかなくなってくるからじゃないかって。頭の中だけでどんどん繰り広げられる何かを放出したくなるというか。 やっぱり小樽みたいに寒いと、体がこわばり縮こまる感じがある。逆にニュージーランドの日差しを浴びると開放的になる。どっちがいいって話ではなくて、環境の違いによる表現の差っていうのは、この作品にもどこか生かされた気がします。さえ子を追ってハワイに行くのは、以前の成瀬なら絶対しなかったこと。雄介の心臓があるからだけでなく、彼自身ちょっと自由な気持ちになっているんだろうなと思いました。 ――前回共演したのは、同じく岡田さんが脚本を手掛けた2019年のドラマ『そして、生きる』です。その時と比べ、何かお互いの印象は変わりましたか? 有村:私は、やっぱ健ちゃんってすごいなって思った。もともとすごく性格がよかったけど、5年前よりさらに、いい意味で背中が大きい、頼りがいのある人になっていて。スタッフさんたちとコミュニケーションをとるのも上手だし、それも計算ずくでやっているわけじゃなくて。みんなを巻き込んでチームを一体にしてくれたというか。本当にいてくれてよかった。 坂口:背中を大きくするにはね、懸垂が一番いいよ(笑)。 有村:……こういう真剣さとジョークのバランスに、みんなが和むんです(笑)。 坂口:巻き込み力があるって言ってくれたけど、僕はおしゃべりが大好きだし、すぐふざけちゃうから、「段取りが段取りにならない」って言われがち(笑)。まぁふざけるというか、何回も同じことを繰り返すのはみんな疲れちゃうから、回数を重ねる中であえて全然違うセリフを言ってみたりするんです。でもそれができたのは、架純ちゃんがずっと変わらず、さえ子として立っていてくれたから。だからこそ、チームの結束が固まったんですよね。僕はそこに外野から刺激を与えればいいだけだった。そうふるまえたのも、彼女が目印になってくれたからこそです。5年前と変わったところは、あんまり思いつかないな。意識外で、何かは変化しているんだろうけど。 有村:ふたりとも、前はもう少し軽やかだった気もする。30代に入ったからなのかわからないけど。今回、深夜の撮影が続いたのはちょっとしんどかったね。 坂口:眠いし(笑)。もう33歳なんです、僕は。架純ちゃんはいくつ? 有村:来年の2月で32歳。 坂口:(感慨深げに)わぁ~、そうですか。お互い大人だね。時が経つのは早いなぁ。 ●Netflixシリーズ『さよならのつづき』 北海道のコーヒー会社で働くさえ子(有村架純)は、恋人の雄介(生田斗真)からプロポーズを受けたその日、彼を交通事故で失う。悲しみを振り払おうと仕事に没頭するさえ子。一方、雄介の心臓を提供されて命を救われたのは、大学職員の成瀬(坂口健太郎)だ。彼の病を知った上で一緒になった妻のミキ(中村ゆり)と、リンゴ園を営む彼女の実家で暮らしている。手術以来、成瀬は時々フラッシュバックする自分のものではない記憶に違和感を覚えていた。さえ子と成瀬は通勤中に偶然出会い、列車のトラブルをきっかけに言葉を交わす仲に。やがて移植された心臓が雄介のものだとわかり、徐々に二人は互いへの気持ちに揺れはじめるが……。 出演_有村架純 坂口健太郎 生田斗真 中村ゆり 奥野瑛太 伊藤歩 古舘寛治 宮崎美子 斉藤由貴 イッセー尾形 三浦友和 脚本_岡田惠和 監督_黒崎博 音楽_アスカ・マツミヤ 主題歌_米津玄師「Azalea」 撮影監督_山田康介 美術監督_原田満生 エグゼクティブプロデューサー_岡野真紀子 プロデューサー_黒沢淳・近見哲平 ラインプロデューサー_原田耕治 制作プロダクション_テレパック 原案・企画・製作_Netflix Netflixにて独占配信中 ●有村架純 1993年生まれ、兵庫県出身。近年の主な出演作に、映画『コーヒーが冷めないうちに』(18)、『花束みたいな恋をした』(21)、Netflix映画『ちひろさん』(23)、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(16)、連続テレビ小説『ひよっこ』、『中学聖日記』(18)、『そして、生きる』(19 )、『太陽の子』(20)、『姉ちゃんの恋人』(22)、NHK大河ドラマ『どうする家康』(23)、『海のはじまり』(24)など。待機作に映画『花まんま』(2025年春公開予定)、『ブラック・ショーマン』(2025年公開予定)がある。 ●坂口健太郎 1991年生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に、映画『今夜、ロマンス劇場で』(18)、『仮面病棟』(20)、『劇場版シグナル長期未解決事件捜査班』(21)、『余命10年』、『ヘルドッグス』(22)、Netflix映画『パレード』(24)、ドラマ『東京タラレバ娘』(17)、『そして、生きる』(19)、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(21)、『婚姻届に判を捺しただけですが』(21)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、『競争の番人』(22)、『Dr.チョコレート』(23)、『CODE-願いの代償-』(23)、『愛のあとにくるもの』(24)など。 Photo_Yuka Uesawa Styling_Yumiko Segawa (Arimura)、Taichi Sumura (Sakaguchi) Hair&Make-up_ Izumi Omagari (Arimura)、Mayu Ishimura (Sakaguchi) Text&Edit_Milli Kawaguchi
GINZA