有村架純×坂口健太郎 Netflixシリーズ『さよならのつづき』インタビュー
坂口:洋服って、その人らしさを伝える上で大切ですよね。成瀬はファッションにすごく興味があるわけではなく、あくまで大学職員という仕事にふさわしい格好をしています。でもなんか、上品なものを着ているなって。あんまりヴィヴィッドな色ではなく、明るくてくすんだ色が多く、そこに彼の儚げな感じがよく表れていると思いました。逆にさえ子はいろんな色を楽しんでいたけど、テーマカラーとかはあった? 有村:ううん。特になかったけど、パキッとした色合いが多かったかな。その上で成瀬といる時のバランス感も、杉本さんがしっかり計算してくれていた印象があります。 ――共演して印象に残っているのはどのシーンですか? 坂口:僕はあそこかな、やっぱり大変だったから。山崎駅のホームでさ、さえ子がぽつんと一人で電車を待っているところに成瀬がやってくるシーン。 有村:そうだね。深夜だったし、リハーサルも2日間に分けておこなったし。 坂口:いや2.5日間くらい。だって、リハーサルのリハーサルみたいなのもやったもん。 有村:黒崎博監督がしっかり芝居を見てくださる方で。どれだけ新鮮味をもってやれるかが勝負だったよね。 坂口:だから、ある段階で僕らふたり、「監督、もうこれ以上は……!」って懇願して(笑)。 有村:そうしたら監督も「そうかそうか、わかった」って。 坂口:線路をはさんで会話をする間の動きについては、ただ座ってセリフ合わせをするだけではイメージしづらいから、スタッフの方たちに情報共有する意味でも、たしかにリハーサルは大事でした。結果的にかわいらしいシーンになってよかったです。あとはその直後、さえ子が成瀬に対してハグするというか、心臓の音を聴く時の距離感をどこまで近くするかは、すごく難しかったんですよね。 ――ということは、ハグしない選択肢もあったということ? 坂口:もちろんそれもありえました。左胸に耳をのせるだけでもありだったし、ハグするにしてもどのタイミングで手を回すか。そのシーンより前に、はじめてさえ子が成瀬の鼓動を聴く場面があって、そこでは彼はさえ子に触れないんです。(撮影監督の山田)康介さんが、触れようかためらう僕の手のカットを別で撮ってくれていましたけど。ちょっとずつお互いの気持ちが近づいていく表現のひとつとして、肉体的な接触はすごく繊細な部分だから、山崎駅のシーンの撮影では特に時間をかけて話し合いましたね。 有村:プロデューサーさんは「衝動的に」というワードをおっしゃっていて。そういうお互いに求め合っていた、みたいな動き方もできることはできます。でも果たしてそれが感情的に合っているのかどうか、正解がわからなくて。何がしっくりくるのかについては結構、闘ったかもしれない。 坂口:難しいシーンだよね。俳優としてそう体を動かせるとしても、なんというか……、そこに“実(じつ)”がないと感情が動かないなってタイミングもあったりするんです。客観的にどう見えているんだろうと不安を感じた時に、たとえば「大丈夫だよ」っていう答えがきたとする。この「大丈夫だよ」という言葉って、意外と怖いんですよ。 ――実は確実な言い方ではないというか。 もしかしたら穿った見方なのかもしれないけど、「大丈夫」って言葉で心は落ち着かないんだよなって。そんなちょっとだけひねくれた気持ちで、現場にいる瞬間もありました。