医療人類学者が警告「アレルギー」途方もない負担 花粉症、食物アレルギー等がもたらす重い問題
医療人類学者であり、自身もアレルギー患者であるマクフェイル氏は、著書『アレルギー』の中で読者にこう語りかける。 「アレルギーを発症している人の生活の質(QOL)は、そうでない人に比べて一般的に低い。不安とストレスのレベルはより高く、より頻繁に倦怠感を覚える。集中力とエネルギーレベルは下がる。もしかしたら、この本を読んでいるあなたもアレルギーの持ち主で、その感覚を既に知っているかもしれない」(6ページより)
特定の場や物質を避けなければならない煩わしさ。いつどこで発作の引き金が引かれるかわからない恐怖。 アレルゲンや症状、重症度は異なれど、これらはアレルギーを抱える人々に共通の感覚ではないだろうか。 「アレルギーに苦しむ人々の大半は、調子が『とても良い』状態を期待することはやめてしまい、調子が『悪くはない』状態で人生の大部分の日々を過ごせればそれでいいと妥協している」とマクフェイル氏は言う。 『アレルギー』は、21世紀におけるアレルギー問題の背景を探るマクフェイル氏の、個人的でありかつ科学的な旅路の記録だ。
「アレルギーに苦しむ人々は、アレルギーのない人々にはしばしば見えていないような事実を知っている。私たちの体は絶えず、身の回りの空間と物体を構成する何十億もの見えない粒子、微生物、化学物質、タンパク質とぶつかり合っているという事実を」(6~7ページより) 食物アレルギー、皮膚アレルギー、昆虫アレルギー、薬品アレルギー、呼吸器アレルギー……マクフェイル氏が取り上げるアレルギーは多種多様だ。だが、それらには皆、社会構造とライフスタイルの急激な変化という共通の要因が関わっている。
変わりゆく世界の中で、私たちはアレルギーと共にどう生きていくのか? 本書には起こりうる未来の姿が描かれている。
坪子 理美 :英日翻訳者