ソフトバンク、「医療AIに猛進」の知られざる内幕 孫社長が事業立ち上げを託したキーマンに直撃
ソフトバンクグループが、がん医療データ分析のアメリカのTempus AI, Inc.(以下、テンパス)との合弁会社設立を発表したのは、6月27日のこと。孫正義会長兼社長は、「私自身、昨年父をがんで亡くし、毎日泣いた。同じような経験をしている人の悲しみを少しでも減らしたい」と熱く語った。 携帯電話事業立ち上げ時の宮川潤一氏、PayPayを一気に普及させた小澤隆生氏。孫社長が新しい事業を立ち上げる際には、たいてい全幅の信頼を寄せるキーマンがいる。医療AI事業におけるキーマンは、今回の合弁会社、SB TEMPUS(エスビーテンパス)で取締役CDO(最高デジタル責任者)を務める柴山和久氏だ。 【写真で見る】ソフトバンクグループの医療AI事業におけるキーマン、柴山和久氏。新たに設立した合弁の取締役CDOを務める
合弁会社立ち上げの背景、AGI(汎用人工知能)、そしてその先にあるASI(人工超知能=AGIがさらに進化したもの)への取り組み状況などを柴山氏に聞いた。 ■「柴山、メディカルAGIをやるぞ」 ーー8月1日にエスビーテンパスが設立されました。ソフトバンクグループ側の役員陣をみると、若手ホープの北原秀文氏が社長、通信事業参入時からの孫社長の懐刀である筒井多圭志氏が取締役チーフサイエンティスト、そしてビッグデータ専門家の柴山さんが取締役CDOという布陣です。そもそも孫社長からはどのように声が掛かったのですか。
検討が始まったのは昨年10月。「柴山、メディカルAGIをやるぞ」ということで孫さんに呼ばれた。メディカルAGI、そしてその先にあるメディカルASIとは、AIのパワーを医療分野に活用していこうという取り組み。背景にあるのは、がんで亡くなる人を減らしていきたい、という強い思いだ。会見でも言っていたように、孫さんのお父さんが突然のがんで亡くなったことが、大きなショックだった。 遺伝子検査データ、電子カルテのデータ、CT/MRIなどの画像データ、病理データなどを集めてAIで解析していったら、患者さんにもお医者さんにも役に立つものが開発できるんじゃないかというところからスタートしている。