ソフトバンク、「医療AIに猛進」の知られざる内幕 孫社長が事業立ち上げを託したキーマンに直撃
ーーなぜ柴山さんに声が掛かったと思いますか。 私はAgoop(ソフトバンク100%出資子会社)において、位置情報のビッグデータの取り扱いをしてきた経験値がある。医療に関するデータは位置情報と同様に、取り扱いに注意が必要なプライバシーデータなので、私の経験値が生かせると考えたのだろう。 それと、私には順天堂大学の客員教授という肩書もある。コロナの感染拡大抑止のための人流データの活用を進めていく中で、先ほど話に出た筒井(多圭志取締役)さんから「順天堂大学の大学院でデータサイエンスの授業を受け持たないか」との話があったので引き受けた。2020年に授業を始めたので、すでに3年目。孫もそのことを知っていた。
あと、もう1つ理由があるかもしれない。 実は、私自身が2020年に消化器系のがんを経験したがんサバイバー。当初は腸閉塞ということで手術を受けたものの、術後の検査で実はステージ2のがんであることがわかった。 入院しているときに孫さんから「ディナーに来ないか」と連絡があった。そのころ、よく食事を一緒にしていたので。しかし、入院しているから行けない。「すみません。入院しているのですが、がんでした」と伝えたところ、「大変じゃないか、紹介するから転院するように」ということで、孫さんのお父さんが入院している専門病院に転院した。
仕事をやりながら抗がん剤の投与を続けて、一時期は体重が15~20キロほど減ってしまった。でも、なんとか寛解できた。現在は再発をしていないか定期的に検査をしているところだ。 ひとりの患者として、医療現場におけるデータ不足を痛感した。そしてお医者さんもそのことに問題意識を持っていることを知った。その経験を事業に生かせ、ということだろう。 ■当初は「ゼロからの立ち上げ」を考えた ーーテンパスと組んだ理由は?
当初はゼロから立ち上げようと考えていたが、昨年末~今年頭に、テンパスの存在を知った。テンパスのエリック(・レフコフスキーCEO)と孫は、別のベンチャーへの投資を通じて知り合いだったこともあり、これをちょっと調べてみろ、と。 テンパスは2015年設立のがんに特化したデータサービスの企業で、遺伝子検査サービス、医療データの製薬会社への提供、AIを活用した治療選択肢の病院への提供、という3つの事業を行っている。