ソフトバンク、「医療AIに猛進」の知られざる内幕 孫社長が事業立ち上げを託したキーマンに直撃
ーーまずは遺伝子検査数を増やしていくことが目標です。 国内におけるがん患者の遺伝子検査数は年間2万件と少ない。遺伝子検査は標準治療後に行う、といった制限があることがその原因の1つ。これをがんに罹患したとわかった段階で検査できるようにしていく必要がある。 同時並行で進めているのがアダプターの開発だ。テンパスでは、病院ごとに異なるカルテデータを横断して活用するためのアダプターを開発しているが、日本用のものを作る必要がある。
日本の電子カルテは、大手ベンダーである富士通、NEC、日本IBMなどが病院ごとに細かくカスタマイズしているので、アダプターの整備には相当の工数が必要になる。事前に想定していた以上に厄介な開発になりそうだ。 これが動き始めれば、お医者さんは目の前の患者の治療法について、多くの事例を基にしたレコメンドを得られるようになる。遺伝子解析も含めてマッチングして、類似の症例で効き目があった治療法がわかれば、その治療法を選択肢として示すことができる。医者にとっても患者にとっても大助かりとなるはずだ。
ーー医療現場からの支持と協力が不可欠ですね。 データが少ない、ということでいちばん困っているのはお医者さんかもしれない。 私もがんであることがわかったときに、お医者さんと一緒に悩んだ。抗がん剤を打ってもいい、打たなくてもいい、どうしますか、と言われたし、副作用についても相当個人差があるが、やってみなければわからない状態だった。 幸い、私の場合はあまり副作用はキツくなかったが、それでも手足過敏症になってしまい、クルマのハンドルを握ったりドアノブを触ったりするとピキッと激痛が走ることがあった。こうした症状についても、「遺伝子分析によると、あなたにはこのような副作用が出る可能性がありますよ」と事前にわかっていたほうがいい。
ーーその先の目標は? 遺伝子データ、ライフログを組み合わせることで、予防にも活用できるようにしていきたい。たとえば、「このパターンの遺伝子特性を持っている人が、食事の際に心がけなければいけないこと」というものがわかる。 本人の許諾を得ることが大前提だが、位置情報を活用すれば、たとえば深夜にラーメン屋に30分いたことを把握できる。医者はそのデータを見て注意を促せばいい。「ラーメン屋にいきましたか? 避けたほうがいいですよ」と。