脱炭素よりも貧困対策、化石燃料の自家用発電機に頼らざるを得ない新興国で脱炭素をどう進めるべきか?
日本を含む先進国では、2050年のカーボンニュートラル実現が大きな目標になっている。だが、新興国では停電が日常茶飯事な上に、再生可能エネルギーを普及させるためのインフラや人材、資金が十分になく、なかなか普及が進まない。生成AIの開発競争で電力需要が爆増する時代に、どのように脱炭素を実現するのだろうか。(山中 俊之:著述家/コラムニスト) 【写真】ChatGPTの言語予測モデルであるGPT-3を開発するには、原子力発電1基が1時間かけて生み出す電力を使う 「停電が多発するので自家用発電機、しかも化石燃料由来の発電機に頼ってしまう」 地球環境問題を話し合う会議において、再生可能エネルギーにも詳しいナイジェリア出身の環境コンサルタントが強調していた。 ナイジェリアでは、公共のグリッド(送電網)から電気が来ることが少なく、停電が多発している。「また、停電(NEPA)か」という言葉は、日常的に最も使われる言葉だというジョークもあるほどだ。そのため自家用発電機で発電せざるを得ないのだ。 自家用発電の源は、再生可能エネルギーであることが望ましい。しかし、新興国では太陽光パネルなどとつなげるのはコスト的に容易ではない。ナイジェリアのような産油国の場合、石油由来の化石燃料を入れたほうが少なくとも短期的な視点では大いにコスト面では安くなるため、人々が化石燃料に走ってしまうこともやむをえない。 アフリカ諸国は、本来、太陽光、水力、地熱エネルギーなど再生可能エネルギー源となる自然資源が豊富である。しかし、このような豊富さにもかかわらず、再可能エネルギーへ転換が進まず、依然として深刻なエネルギー不足に直面している。 本コラムでは、このようなアフリカ諸国など新興国の脱炭素がいかに困難かという話に加えて、先進国で爆発的に高まっているAI関連の電力需要にも言及しつつ、今後の脱炭素についてビジネスの関わり方についても考えていきたい。 日本を含む先進国では、2030年に温暖化ガス排出量をおおむね半減し、2050年にはカーボンニュートラルを実現するという目標が大きな方向性だ。一方、新興国では2060年や2070年にカーボンゼロを目指している場合も目立つ。先進国よりも10~20年遅れの目標となっている。 そもそも、アフリカ諸国をはじめ新興国では一般になぜ脱炭素が進まないのか。 第一に、貧困対策などを含めた経済成長のための政策が優先されることだ。