脱炭素よりも貧困対策、化石燃料の自家用発電機に頼らざるを得ない新興国で脱炭素をどう進めるべきか?
■ 発電はできてもグリッドがない 筆者は、アフリカやアジアの新興国の経営者・リーダーと経済成長と脱炭素の両立に関する議論のファシリテーションを担当する機会が多々ある。新興国の経営者・リーダーも一様に脱炭素には方向性としては賛成だが、自らの国が貧しいことを理由に、「まずは先進国から脱炭素に取り組むべきだ」「先進国とは事情が違うので、経済成長を優先すべき」との意見は根強い。 新興国では、環境保護よりも貧困層対策を中心とした経済政策が、政治的にはるかに高い優先課題であることが多い。政治的に脱炭素が後回しになることは、いわば必然でもあるかもしれない。 第二に、再生可能エネルギーに転換するためのインフラが整っていないことだ。 ナイジェリアの事例でもあった通り、グリッド(送電網)のようなエネルギー供給インフラが整っていない地域が多く、再生可能エネルギーを発電しても送電ができないことが多い。自家用のソーラーパネル設置も可能であるが、コストがかかる。 また、新興国では、再生可能エネルギー技術の普及や導入が遅れていることが多く、技術的なサポートや人材育成といった技術や人材などのインフラ整備も進んでいない。それ点も再生可能エネルギーの進展を阻んでいる。 第三に、第二の点と関連するが、資金不足である。 インフラへの投資には多額の資金が必要だが、新興国は先進国と比べて資金力が限られており、再生可能エネルギーへの投資が困難である。 先進国は新興国に対して、共同で新興国の脱炭素を支援する基金等を設立するなど様々な取り組みを進めているが、まだ十分な規模になっているとは言いがたい。 第四に、特にアフリカ諸国に当てはまるが、政府の腐敗などを含めた政情不安である。 資源国が多いアフリカ諸国では、大統領など政治指導者とその周辺が、資源の利権を独占して暴利を得ることがある。これら腐敗は、国民の政治不信を招き、反対勢力との政治闘争を激化させてしまう。このような政情不安は、先進国からの投資を遠ざけてている。