〈遺産分割協議〉でモメたくないなら「弁護士」と「配偶者」の介入を避けるべき、納得のワケ【相続専門税理士の助言】
相続でモメたくないという思いは、誰にとっても共通のものです。それでも、遺産分割協議の際に、親族間での諍いの原因となりがちなのが「弁護士」もしくは「配偶者」が介入する場合である、と「税理士法人レガシィ」代表税理士の天野大輔氏は言います。天野氏の著書『相続でモメる人、モメない人』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
遺産分割協議で「弁護士の立ち会い」は必要?
円満に遺産分割協議を進めるためには、「最初から弁護士に立ち会いをお願いする」と考えるのと、「弁護士に頼むのは実際にモメて収拾がつかなくなったらでいい」と考えるのでは、どちらがいいでしょうか。 数多くの相続に関わってきた立場からすると、最初から弁護士に依頼するのはやめたほうがいいでしょう。また、実際にモメた場合でも、必ずしも弁護士に依頼するのが効果的とは限りません。弁護士に依頼するのは、最終手段として慎重に考えたほうがいいでしょう。 一方でもし税金の計算に不安があれば、税理士には最初から関わってもらい、公平な立場でアドバイスをもらうのがいいでしょう。遺産分割をする際には、実際に相続税がどれくらいかかるのか、税金の計算なども必要になります。 親と同居していた長男などが窓口になって税理士に依頼するのが一般的ですが、税理士の反応が遅いと、他の相続人が「連絡を遅らせて、検討する時間をなくそうとしているのではないか」と疑心暗鬼になります。 自分が不利になってしまうのではないかと考えて、弁護士に相談してしまうこともあります。そこまでいってしまうと、モメなくていいケースでもモメてしまいます。 遺産分割の話し合いの「交渉」は弁護士にしかできない 一方でもめごとが発生してしまったときに、相続人の言い分を聞いて遺産分割の交渉ができるのは弁護士だけです。税理士や司法書士など他の専門家が行うと法律違反になります。また、ひとりの弁護士が複数の相続人の代理人になることもできません。 遺産分割の話し合いをしている間は、意見がぶつかりあったとしても「もめごと」ではありません。相続におけるもめごとは、相続人の中の誰かひとりが弁護士を雇った瞬間に始まります。 ひとりが弁護士に依頼すると、他の相続人も雇わざるをえなくなり、本当の意味でのもめごとになるのです。その後は弁護士同士の話し合いになります。そうなると家族間の仲はとてもギスギスし、遺産分割を終えても後味の悪さが残ります。ですから、相続人同士で分割協議ができる間は、本人たちで話し合いをして解決策を探ったほうがいいのです。
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