「新生・バーガーキング」がブレイクできた理由。「初上陸時の失敗」を分析し、独自のポジションを築くまで
外食産業専門コンサルタントの永田ラッパと申します。「日刊SPA!」では、これまで30年間のコンサルタント実績をもとに、独自の視点から「食にまつわる話題」を分析した記事をお届けしていきたいと思います。今回のテーマは、「バーガーキング」です。
短期間でブランドバリューを伸ばす戦略
『バーガーキング』が日本に初上陸したのは1993年です。しかし、上陸後の業績は芳しくなく、数回の撤退や経営譲渡など繰り返しています。現在は海外ファンドの傘下で運営しており、以前とはかなり事情が異なるようです。一体何があったのか、ここでは「新生・バーガーキング」について見ていくことにしましょう。 バーガーキングはまず、ドミナント戦略に乗り出しました。ドミナント戦略とは、特定地域に集中的に出店していくことです。都心部などの重要な拠点に、続々と出店していったのです。すると「バーガーキング、最近増えたよね」「はやっているのかな?」などと話題にもなり、ブランドバリューが伸びていきます。そしていまもそれを継続しており、店舗数も200を突破しています。中長期の予想でも、2027年ごろには600店舗に達しているだろうとも言われており、ロッテリアを超えることまで宣言しているのです。 日本のファンドならば、コストの見直しや店舗のリストラクチャリングによって業績が黒字化するまで縮小を続けます。しかしあえてそれとは逆のことをやる点に、海外ファンド主体の利点があらわれているといえます。
アメリカンスタイルを持ち込んで差別化
日本上陸後のバーガーキングがとりうる戦略は大きく次の2点がありました。 ①日本にローカライズさせること ②現地バーガーキングのスペックを大切にすること 初上陸直後のバーガーキングは、このうち①の方向で動いていました。マクドナルド、ロッテリア、ファーストキッチン、モスバーガーなどを意識し、そのうえで後発のアメリカブランドとして、日本でどれだけのポジションを築くことができるのかが大きな課題でした。しかし当時のバーガーキングは、日本にうまくローカライズさせることができなかったのです。日本に合わせようとすればするほど、マクドナルドと比較されてしまい、かえって苦境に立たされるという悪循環に陥ってしまったのでした。 反省をふまえてか、いまは②の方向で徹底しています。アメリカ人が大好きなバーガーキングのままで上陸しているのです。とくに注目すべきは「ワッパー」という商品を軸に据えていることでしょう。ワッパーを大げさに表現すると「どデカいもの」という意味です。日本で一般的に食されているハンバーガーの約1.4倍の大きさなのです。アメリカンサイズのまま、ということです。 そしてセットメニューに「キングミール」というものがあります。ハンバーガーのほかにドリンク、フライドポテト、チキンやパイなどが付いてくるものです。これもアメリカ式といえます。また多くのお店ではパティを鉄板で焼きますが、バーガーキングは直火焼きです。そのため肉本来の香ばしい香りと風味を楽しめます。オペレーションも日本式ではなくアメリカ式に合わせているのです。