ブリヂストン元CEO荒川詔四氏が訴訟リスクを負ってまで「超強気な業績目標」を掲げた理由
■ CEO就任時にあえて「高いハードル」を掲げた理由 ──荒川さんはブリヂストン本社CEOに就任した際、「ROA (総資産利益率)6%」という高い業績目標を掲げました。そこにはどのような判断があったのでしょうか。 荒川 経営には2つの必須事項があると考えています。1つは、「自社のあるべき姿を描くこと」、もう1つは「持続的成長を遂げること」です。私がCEOに就任した時、ブリヂストンにはそれらが足りていませんでした。そして、これらの必須事項をクリアする上で、中期経営計画は欠かせないものです。 しかし当時、中期経営計画を重視する日本企業はあまり見られず、ブリヂストンにも中期経営計画は存在しませんでした。そこで社内で議論を重ねて中期経営計画を策定し、定性目標として「名実共に世界ナンバーワンになること」、定量目標として「ROA6%」と決めました。2006年の本社CEO就任後、2007年に発表した中期経営計画「2012年にROA6%を達成」がこれに該当します。 上場企業が具体的な定量目標を掲げると、目標へのコミットメントを問われ、未達の場合には株主から訴訟を起こされるリスクがあります。しかし、私は臆病者だからこそ、そうしたリスクも十分考慮し、「達成できる」と自信を持って目標を発表しました。タイやヨーロッパ現地法人CEOとして利益率の改善に成功してきたからこそ、その手ごたえを感じていたのです。 ──かなり踏み込んだ目標を掲げたわけですね。市場変化に対するリスクには、どのように対応したのでしょうか。 荒川 「経営環境は常に変化する」ということは前提として考えなければいけません。しかし、状況が変化するからこそ、自分たちの指針となる目標を置く必要があります。 さまざまな事象によって環境が変わる中、「当初考えていた前提条件とどう違うのか」「その結果として、自分たちが考えた計画にどのような影響を与えるのか」を考えること、そして「状況変化にフレキシブルに対応すること」が大切です。 だからこそ、指針としての目標を皆が理解し、あらかじめ共有していることが必要だと思います。