伝統の背番号5を託されたディフェンスリーダー。市立船橋高校・岡部タリクカナイ颯斗が秘めている底知れないポテンシャル 【NEXT TEENS FILE.】
その背中には、このチームにとっての特別な番号が躍っていた。鈴木和裕。羽田憲司。増嶋竜也。杉岡大暉。全国のファイナルを戦い、のちにプロの門を叩いたレジェンドたちも背負った『市立船橋のセンターバック』を象徴するような背番号5は、岡部に託される。
「波多さん(波多秀吾監督)にも『5番を付けるんだから、もっとやらないといけない』とは言われているので、自分でも『もっとやっていかないといけないな』と思っています」。センターバックとして、ディフェンスリーダーとして、市立船橋を牽引していく覚悟は、もうこの時に定まっていたのだ。
プレミアリーグの前半戦は、とにかく苦しい時間が続く。11試合を戦って3分け8敗。1つの白星も得ることができず、最下位に沈む。だが、永遠のライバル・流通経済大柏高校を千葉県予選決勝で撃破し、挑んだインターハイでは全国8強まで進出。真夏の福島でわずかな兆しは見え始めていた。
後半戦がスタートすると、初戦の青森山田高校戦でシーズン初勝利を記録するが、翌節の鹿島アントラーズユース戦に逆転負けを喫し、迎えた第14節の大宮アルディージャU18戦は、11位対12位の残留争い直接対決。「今回のゲームを迎えるに当たって、『相手がどうであろうと「イチフナとしてあるべき姿」をちゃんと見せよう。そうすれば、あとは結果が付いてくるから』という話をして、1週間トレーニングを積んできました」(中村健太コーチ)。勝負の90分間が幕を開ける。
試合は30分に市立船橋が先制。追い付きたい大宮U18も後半に入ると攻勢を強め、「相手にずっと攻められてメッチャキツかったですね」と岡部も振り返るような展開の中で耐え続けていたものの、84分に一瞬のスキを突かれて同点弾を献上。最終盤でスコアを振り出しに引き戻される。
思わず下を向いてしまうような時間帯での失点。もちろん追い込まれていなかったはずがない。それでも市立船橋の選手たちはまだ諦めていなかった。「昨日のミーティングで中村さんが、Jリーグのロスタイムの同点弾や勝ち越し弾の映像を練習前に見せてくれて、『絶対に最後まで諦めるな』と言われていたので、あの状況でもみんなピッチの中で声を出してやれていたのかなと思います」(岡部)。懸命に前を見据え、ファイティングポーズを取り直す。
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