トヨタが「自動車産業大変革期」を勝ち残るのに必要なこと――テスラとの再提携“西側最強タッグ”結成のインパクト
トヨタはテスラと再提携し「西側メーカーの最強タッグ」を
トヨタとテスラがかつて資本・業務提携関係にあったことを知っている人もいるだろう。2010年にトヨタはテスラ株の3.5%を5000万ドル(当時、約45億円)で取得し、テスラ製バッテリーを搭載したRAV4のEVを開発した。 しかしその後の共同開発は進まず、2014年にテスラはトヨタへのバッテリー供給を打ち切り、トヨタはテスラ株の一部を売却した。当時トヨタは「今後も協業関係は続ける」としていたが、2016年末に残りの株式も売却して提携関係は終わった。 ちなみにカリフォルニア州にあるテスラのフリーモント工場はかつてトヨタとGMが提携して小型車を共同生産していた工場で、テスラはトヨタに株を売った代金でその工場を購入して、トヨタの生産方式の多くを学んだと言われている。一方、トヨタの関係者からは「あまりに企業文化が違い過ぎて付き合えない」といった声もあったようだ。 イーロン・マスク氏は2030年に2000万台の販売を目指すと言っていたが、普通に考えれば達成できない目標だ。商品数を増やすだけでなく、現在5カ所(フリーモント、ネバダ、テキサス、上海、ベルリン)の工場を短期間で20カ所以上に増やさなければならない。 さすがのテスラでもこれは不可能だと思う。ましてや現状の販売実績は前年割れになっている。 ただし、2000万台は無理としてもテスラが今後も販売台数の拡大を目指すことは変わらないだろう。仮にトヨタ並みの1000万台を目指すにしてもオンライン販売だけでは限界がある。 現在のテスラの顧客は新しい商品を購入するのが好きな先進層(いわゆるイノベーター層やアーリーアダプター層)が中心である。しかし、更なる量販を目指すとなると、クルマやITに詳しくない一般の顧客(アーリーマジョリティ層、レイトマジョリティ層)にも販売していかなければならない。 そうなれば、顧客対応を丁寧に行える販売網の構築も必要になるだろう。テスラが現在やっているオンラインのみの販売ではクルマやITに詳しくない層が購入するのはかなり難しいからだ。 「2030年に2000万台のテスラ車を売る」というマスク氏の宣言の数字にはテスラ車のプラットフォーム、車載電池、車載OSの「他社への外販分」も頭に入っていたのではないかと、私は思っている。EVは車両の構造上、右記の3点が用意できれば比較的簡単に様々なタイプのクルマがつくれるからだ。 トヨタとテスラの提携関係は2016年に解消されたが、再度提携関係を結んで、テスラベースのトヨタ車や新ブランド車を生産し、トヨタの販売網を通じて販売してはどうだろうか。