「使命感で現場が奮い立った」羽田の飛行機炎上、ヒーローはJALだけじゃない JR、ANA、スカイマーク…ライバルが交通インフラを支えていた
1月2日夕、テレビ各局が「滑走路で爆発」という衝撃的なニュースを一斉に報じ始めた。この時、東京都内にあるJR東海の「新幹線総合指令所」に所属する古屋学・輸送課指令担当課長は直感した。 【動画】乗客らが次々と避難する様子 乗客の男性が撮影していた
「かなり大きい事態になる」 すぐに、各現場で働く同僚たちへ連絡を取り始めると、驚きの反応が返ってきた―。 羽田空港の滑走路で起きた日本航空(JAL)機の衝突事故は、乗客乗員が全員無事に脱出し、「奇跡」と世界の称賛を集めた。あれから1カ月半が経過。実は、日本の「空の玄関口」が長時間にわたって機能停止に陥る異常事態の中で、ライバル企業の社員たちも、事故を把握した瞬間からそれぞれが動き始めていたことが分かった。 取り組んだのは乗客の救出と、滑走路閉鎖で影響を受ける人々の支援。「当然のことをしただけです」と取材に答えた当事者たちから、日本の交通インフラを支えるプライドが垣間見えた。(共同通信=宮本寛) ▽「使命」を帯びた列車 事故発生の一報を聞いた鉄道会社の古屋さんが身構えたのは、羽田や大阪(伊丹)、関空などで足止めを食う人々が、東京や品川、新大阪といった新幹線の主要駅に集まることが想定されたからだ。
もともと、年末年始期間は新幹線の列車本数を通常より大幅に増やして設定しており、ダイヤに余裕はない。昨年度の東海道新幹線は一日平均で356本が運行。今回の年末年始(12月28日から1月4日)は平均434本だった。 それでも古屋さんは考え続けた。「ちょっとでも増やせないか」 ただ、追加の臨時列車(追加臨)を出すためには、走行計画を決める前の準備が必要になる。最優先は車両と乗務員の確保。指令所はすぐに各現場の情報収集に当たった。すると、現場もこんな共通認識を持っていた。 「何とかして追加臨を走らせなければならない」 まずは車両の捻出。車両基地や運用担当者と調整し、安全に問題がない範囲で、予定していた検査計画を急きょ変更。本来であれば21時ごろに基地に入って検査を受けるはずだった車両を活用することにした。 同時に運転士や車掌らの確保にも動く。次の勤務のために移動予定だった人などに連絡すると「みんな快諾してくれました」(古屋さん)。