父の死後、突然「隠し子」がやってきた…26歳男性が直面した「相続トラブル」の衝撃内容
「隠し子」というのはドラマや小説の中だけの話だろうと思うかもしれないが、実際にはそんなことはない。筆者は2008年以来、本拠地である埼玉県の北西部を中心として東京都や関東全域から相続・遺言関連で年間100件を超える案件を受けているが、隠し子が絡む相続トラブルにたびたび直面している。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 現に、厚生労働省の人口統計調査によれば、1980年代は0.8%だった非嫡出子の割合は右肩上がりで上昇し、2022年は2.3%となった。約40年間で実に3倍近くに増えたわけである。さらに日本は今、3組に1組が離婚するといわれる時代となり、「自分が知らない兄弟姉妹がどこかに存在する」という可能性は高まるばかり。隠し子の存在は、あなたにとっても決して他人事ではないかもしれない。 相続の場面においては、隠し子の存在がその行方を大きく左右することになる。本記事では、ある田舎エリアの相続で隠し子が登場し、円満に終わるはずの相続がもめにもめた悲劇を紹介する。
スムーズな相続だったはずが……
「私は生まれたときからずっと実家暮らしで、大学も県内ですし、就職先も地元。今は、実家から勤め先に通っています。父と母と3人暮らしで、家族仲はいいほうだったと思います。だから、相続でもめるなんてことは、マンガやドラマの中だけの話だと思っていたんですよね……」 そう語るのは、関東近郊の地方都市に住む松井和樹さん(26歳・仮名、以下同)。父親の達雄さんを60歳という若さで亡くし、以来、母親である由貴さん(56歳)と2人で暮らしている。 「父は3年前に急性白血病を発症し、ずっと入退院を繰り返していましたが、1年ほど前に、60歳で亡くなりました。母も僕もショックでしたが、闘病期間があったせいか、覚悟はできていたように思います」(以下、「」内は和樹さんの発言) 達夫さんは残された時間が長くはないことを知ると、自分の財産の整理を行ない、相続の準備を始めた。そのひとつが公正証書遺言の作成である。 公正証書遺言とは、公証人が遺言者に遺言内容を確認し、公正証書として作成する遺言だ。手間と費用がかかるものの、方式に不備があれば公証人が指摘してくれるため形式面で無効になることはなく、加えて公証役場で保管されるため隠匿や紛失などのリスクも低い。遺言作成にはいくつか方法があるが、その中でも確実性・安全性の高い方法といえる。 「実は、母も僕も、父が遺言を書いていたことを知らなかったんですよ。父の死後、部屋の引き出しなどを整理していて見つけました。表に『遺言公正証書』と書いてあって、作成した公証役場が記載されていて。ネットで調べてみると、どうやら公正証書遺言というものらしく、『勝手に開封していい』とあったので、母と開いてみました」 和樹さんの判断は誤りではないが、勝手に開封してはいけない遺言もあるから要注意だ。秘密証書遺言や、自宅などで保管されている自筆証書遺言は、開封にあたって家庭裁判所の検認が必要となるので、もしも被相続人の死後に遺言書を発見したら、士業などの専門家に問い合わせたほうがいいだろう。