父の死後、突然「隠し子」がやってきた…26歳男性が直面した「相続トラブル」の衝撃内容
気になる遺言書の内容は?
達夫さんの遺言書には、「妻の由貴に全財産を相続させる」と記されていた。 「僕には兄弟姉妹はいないので、相続人は母と僕の2人だけ。だから僕は、『親父の遺言のとおり、母さんが相続するのが一番いいと思うよ。これからの老後の生活もあるし』と言いました。遺族年金が支給されるとはいえ、老後2000万円問題もあり、年金だけで母の老後が十分に保証されるとは思えませんでしたから。 僕は実家暮らしでそんなにお金がかからないし、生活は十分に成り立っていましたから、遺産をもらいたいとは思いませんでした。それに、いずれ母が亡くなれば、僕が相続することになりますし」 由貴さんは当初、「和樹にも遺産を分けたほうがいいのではないか」とためらっていたそうだが、和樹さんの説得で納得したという。 「父が残した財産は、家と現預金と、株や投資信託などの金融資産が少しで、総額5000万円くらいです。それをすべて母が相続するということで決着がつきました。それにうちの親族は、みんな仲がいいんです。父の弟である叔父は、僕たちを気遣ってくれていました」
家の前に見知らぬ男が立っていた
達夫さんが亡くなって2週間ほど経ったときに、事件は起こった。 「母と2人でスーパーに買い物に行って帰ってくると、うちの前に40歳くらいの男が立っていたんです。スーツ姿だけど、でも営業マンには見えないし。母も首をかしげていました。てっきり、父の知り合いが線香をあげにきたんだろうと思ったんですが……」 車を駐車場に停めて、和樹さんはその人物に声をかけた。その返事に衝撃を受けることになる。 「『父に線香をあげにきました』って言うんです。それで『うちの父のお知り合いですか、ありがとうございます』と答えたら、『いえ、私は達夫さんの息子なんです……』と。思わず横にいた母を見たら、事態がよくのみこめていないようでぽかんとしていました」 その日は、「線香をあげさせてください、私にとっても父親なんですから」と譲らない男を、「あんまりしつこいと、警察を呼びますよ!」と押しやるようにして追いやったという。 「家に上がって何かを売りつける新手の詐欺かと思いました。でも万が一の可能性を考えて、母に『まさか、親父に隠し子なんていないよね?』と聞いたら、『いるわけないでしょ』と呆れていましたね。たしかに、父はどちらかというと冴えないというか、モテなさそうなタイプで、浮気なんてしそうにありません。 でも、息子のフリをしてくるなんてなんだか気味が悪くて、念のために母が翌日、知り合いの司法書士事務所に行って相談することにしました」 松井家の相続のてん末については、後編記事『「5000万の遺産、オレにもよこせ」…父の死後、「隠し子」から送られてきた「衝撃の手紙」』にてお伝えしている。
澤井 修司(司法書士・行政書士・あす綜合法務事務所グループ代表)