米ディズニー『Disney+』規約根拠に“訴訟取り下げ”求め物議に… 「日本では無効」弁護士が国内でのケースを解説
アメリカワシントン州にあるウォルト・ディズニー・パークス&リゾーツ内のレストランで食事をした女性がアレルギー反応で亡くなったことを受けて、遺族がディズニー社の監督責任を問う裁判を起こしたが、ディズニー社は訴訟を取り下げるよう要求。この対応が8月、日本でも報道され物議をかもした。(杉本 穂高) 【画像】著作権が切れパブリックドメインとなった「ミッキーマウス」
Disney+の利用規約に同意していたから「パーク内の事故」には責任負わない?
死亡した女性は乳製品のアレルギーを抱えており、レストランで注文する際、従業員にアレルギー源となるものが含まれていないか何度も確認したという。しかし食事後、リゾート内でショッピング中にアナフィラキシー症状を起こし、病院に搬送され死亡が確認された。 女性の夫は、レストランのほか、ディズニー社にも監督責任の過失があったとして訴えを起こしたが、ディズニー社は同氏がかつて同社公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」に契約した際に同意した規約を根拠に、同社に対する裁判はできないなどと主張して訴えを取り下げるよう求めた(ディズニー社は後に、今回限りの対応として主張を撤回)。 Disney+およびディズニー社のウェブサイトやコンテンツ、製品などの利用規約には、「お客様は、お客様とディズニーとの間のすべての紛争を拘束力のある個別仲裁を通じて解決し、集団訴訟の放棄及び陪審審理の放棄を含むことに同意することになります」と記載されており、これに同意しサービスを受けたユーザーはディズニー社に関わるあらゆる紛争を仲裁によって解決せねばならないという。本件はアメリカにおける事例だが、日本のDisney+およびディズニー社の利用規約ページにも同様の文言が記載されている。 しかし、この「裁判をさせないかのような規約」は、日本国憲法32条が保証する「裁判を受ける権利」を制限しているように思える。果たしてこのような規約は、日本においては有効なのか、消費者法に詳しい壇俊光弁護士に話を聞いた。
利用規約への同意は契約と同じ
そもそも利用規約とはどのようなものなのだろうか。普段、なんらかのサービスを利用するために、気軽に「同意」ボタンを押している人も多いだろうが、壇弁護士は、これを「契約」行為であるとして次のように説明する。 「利用規約は、事業者が提供するサービスの利用に関するルールを記載したもので、利用者がそれに同意することにより契約と同等の効力を持つことになります。『同意』ボタンをクリックすると、契約書に署名するのと同じ効果が生じるわけです」 また、利用規約に「契約終了後においても本規約〇条が適用される」のような文言が記載されている場合は、サービスを解約した後も効力が残るのが原則になる。 しかし、どんな内容であっても利用規約が有効となるわけではない。 「契約について、一方的に不当な条項については、公序良俗違反(民法90条)で無効とする解釈が採られています。利用規約に書かれていて、ユーザーがそれに同意したとしてもすべて有効になるとは限りません」(壇弁護士)