米ディズニー『Disney+』規約根拠に“訴訟取り下げ”求め物議に… 「日本では無効」弁護士が国内でのケースを解説
「不起訴の合意」は日本でも有効なのか
ではディズニー社のような、「トラブルが起きても裁判を起こさない契約をする」利用規約は、日本において有効なのだろうか。壇弁護士は続ける。 「こうした契約を『不起訴の合意』と言いますが、日本の利用規約ではあまり見かけない条項です。前述の通り、日本では一方的に不利益な条項は無効になります。 最近の例では、某宗教法人が献金の返還を阻止するために作った「返還請求や損害賠償請求をしない」という旨の念書について、裁判を受ける権利(憲法32条)を制約するものである等として公序良俗違反で無効と判断されました(最高裁 令和6年7月11日判決)。 また、利用規約が問題となる場合、消費者契約法10条で、消費者の利益を一方的に害するものは無効とすると規定されています。裁判所は現在、同条の適用に消極的なのですが、それでも今回のアメリカにおける例のように消費者が全く訴訟できないという条項は、日本においては無効となる可能性が高いでしょう」
「利用規約」めぐる裁判、日本でも
壇弁護士によれば、日本でも利用規約を巡るトラブルは、数多く起きているという。 たとえば、予備校の元受講生が、フリマアプリで予備校のテキストを第三者に譲渡したケース。予備校は、受講規約を根拠に違約金など500万円以上を請求したが、裁判所は予備校が被った損害を詳細に認定したうえで、違約金は100万円を限度で認めるのが相当であり、それを超える請求については公序良俗違反で無効であるという判決を下した(東京地裁 令和4年2月28日判決)。 また、大学への入学を辞退した学生が合格時に納入した入学金や授業料等の返還を求めた裁判を提起したところ、「募集要項」に記載した「不返還特約」を根拠に返還を拒んだ大学側が一部敗訴し、授業料に限り返還が命じられたケースもある(最高裁 平成18年11月27日判決)。 一方で、事業者側に有利な判決が下されることも。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのインターネットチケットストアの利用規約には、原則として、一度購入したチケットのキャンセルを禁止する条項が記載されている。これについて、消費者の権利に制限が生じるとして適格消費者団体が訴えを起こしたが、この条項はチケット転売による高額化を防ぐことを趣旨としており、消費者契約法違反には当たらないとされた(大阪地裁 令和5年7月21日判決※現在控訴審中)。