中東が混迷を深める理由とは? 黒木英充、鈴木恵美、高橋和夫、萱野稔人、春香クリスティーンが議論(1)
イラク戦争とは
萱野:なるほど。高橋さん、どのようにご覧になってますか、今の中東の混乱。 高橋:私もお2人の意見に賛成なんですけど、新たなポイントを1つ指し示すとすると、やはりイスラム国、今、イラクとシリアを支配してますよね、一部をね。で、イラクでサダム・フセイン体制をアメリカが無理やり倒したと、そのつけが回ってきているというのは指摘できると思いますよね。ですから、リビアもそうですし、エジプトもそうでしたけど、独裁体制が強い間は混乱はなかったわけですよね。その平和がいいのかっていうのはまた別問題ですけど、安定してたわけですよね。それを無理やりに倒してしまって。 私はよく言うのはやっぱり、イラクっていうのはまとまりの悪い国で、スンニ派とか、シーア派とかクルドとかアラブとか。だから、われわれが持ってるこの台本みたいなもんで、サダム・フセイン体制っていうのはこのホチキスみたいな人だったわけですよ。それをアメリカが無理やり引っぱがして、中東は風が強いから今、ばらばらばらとなろうとしているという、そういう要因があると思いますね。ですから、1つの秩序が壊れて、まだ新しい秩序が出来上がっていない。そういう時代だと思いますね。 萱野:なるほど。今の秩序の混乱の原因をもっとさかのぼると、やはりイラク戦争まで行き着くんだということですよね。 高橋:そうですね。 萱野:で、アメリカ自身がその秩序のふたというか、このホチキスを取ってしまったというところが原因だということですよね。 高橋:そうですね。だから、イラクは難しいから、そのあとが難しいからって専門家はみんな思ったんですけどね。いや、簡単だよ、と思った人たちが戦争を始めて。 萱野:そうですね。 高橋:ほら、見たことかと言ってみても、イラクの混乱はもう止まらないですからね。 萱野:なるほど。あれが最初の秩序崩壊の序章というか、きっかけになったということですね。お伺いしたいんですけれども、イラク戦争からアラブの春のまで、だいたい8年ぐらい期間がありますよね。2003年にイラク戦争が始まって、アラブの春が2011年。何か関係があるんですか。イラク戦争があったからアラブの春が起きたとか、イラク戦争によってアメリカがイラクの秩序をがっと転覆というか、倒してしまったが故に、ほかの地域まで秩序の揺らぎが波及したっていうことは言えるんでしょうか。 高橋:イラクに関して、ですから、おそらくそのイラクが混乱したということと、ほかの国々でアラブの春が起こったということはたぶん直接な関係はないと思うんですね。やはり、エジプトはエジプトでやっぱり長年の矛盾というのが、イエメンもそうですし、いつ爆発するだろうかという感覚でずっとわれわれ見守って、で、それがたまたま2011年だったということですね。ですから、人口問題、失業問題、格差の問題、いろんな問題があって、そこで、たまたま2011年だったというふうに見てますね。