中東が混迷を深める理由とは? 黒木英充、鈴木恵美、高橋和夫、萱野稔人、春香クリスティーンが議論(1)
アラブの春の影響
萱野:なるほど。鈴木さんはどのように見られてますか。今の中東の混迷の原因というのは。 鈴木:原因は本当に1つではなくて、いくつもあると思うんですけれども、1つには2011年に始まった、いわゆるアラブの春、アラブ動乱後のそのときに崩壊してしまった秩序ですね。主に共和制を取る国においてアラブ動乱があったわけですけども、その後の秩序が崩壊して、新しい新秩序っていうのを作っていければいいんですけれども、そこに至らないと。新しい体制を模索する以前の、まだ崩壊しているような今、状況にたぶんあるんだと思うんですね。ですので、しばらくはこのような状態でいる、続くと。で、そういう過程でシーア派対スンナ派であるとか、若者のフラストレーションが爆発するだとか、いろんな次元で、さまざまなレベルで複合的に問題が今、噴出しているんだと思いますね。 萱野:今のこの混乱の一番近いところでの出来事っていうのを考えるなら、2011年のアラブの春だろうというふうに考えていいわけですか。 鈴木:そうですね。はい。 萱野:なるほど。そこでどこの国も長期政権、独裁政権でもあったわけですけども、崩壊しましたよね。それが結局、秩序のふたを取っちゃうというような、そういうようなことがあって、今のような混乱に陥っていったっていうふうに考えればいいですか。 鈴木:そうですね。はい。独裁者、決していいというわけではないですけれども、ああいう独裁者、あるいは権威主義体制っていうのは国のいろんな不満を押し込める、いいとは言えないですけども、少なくとも多くの人が今のように亡くなることはなかったわけですよね。みんな我慢していたと。そのたがが外れてしまった状態なんだと思いますね、今。 萱野:なるほど。リビアなんてもうそうですよね。 鈴木:そうですね。まさに。 萱野:カダフィ政権倒そう、そこではNATOも空爆しましたからね。カダフィ政権倒すために。で、倒れたはいいけれども、結局、もっと最悪の事態になってしまったのかもしれないということですよね。 鈴木:そうですね。いっぱい武器をためこんでいた国家ですから、その武器を管理する人、ない状態でつぶしてしまったというところに、私の専門はエジプトですけども、エジプト、今非常に大混乱ですけれども、その一因はお隣の国、リビアから大量の武器弾薬が入り込んでしまっているっていうところですね。