中東が混迷を深める理由とは? 黒木英充、鈴木恵美、高橋和夫、萱野稔人、春香クリスティーンが議論(1)
萱野:なるほど。これ、中東をどう見たらいいのかっていうことにもつながると思うんですけれども、2011年のアラブの春って何が原因で起こったんですか、鈴木さん。いろんな要因があると思いますけど、当時は日本ではインターネットだとかソーシャルネットワークとかいろいろ言われたと思うんですけれども、もっと別のところに原因があるような気もするんですよ。アラブの春の原因、なんなんですかね。 鈴木:私の個人的な意見ですけれども、独裁体制を倒せっていうことを言いましたけれども、あの一連の革命というか動乱というのは、やはり反汚職運動、反汚職革命だったと思うんですね。で、その汚職っていうのは本当に私たちが思うような悪いビジネスマンとか、政治家と癒着したビジネスマンが不当に利益を得るだとか、そういう金銭的な汚職もそうですけれども、縁故主義ですよね。コネのあるいいとこのお坊ちゃん、お嬢ちゃんばかりが就職できたりとか、そういう広い意味での腐敗、汚職っていうのがもう社会の末端にまで浸透していたので、それに対してこれからの将来、生きなきゃいけない若い世代が立ち上がったということだと思いますね。で、その腐敗、汚職の象徴が大統領だったっていうことだと思いますね。非常に反汚職色が強いのがアラブの春だったと思います。 萱野:なるほど。今の話、よく分かりやすかったんですけども、ということは、縁故主義が蔓延してるということは、そういう社会なんだというふうにアラブ社会をわれわれ、見ていいということですか。根強い。 鈴木:ええ。少なくとも2011年まではかなりそういう傾向はあったと思うんですね。で、今も残念なことに、今もあまり本質的には変わってはいないと思います。ただ、それに対して「ノー」を言う若い世代が今ちょっとがつっとやられてしまってますけども、今少しおとなしいですけどれども、若い世代が確実に育ってきているので、10年後、20年後はまた別な形で、いい作用っていうか、汚職は駄目だっていうような、そういう空気っていうのがまた出てくるかもしれないですね。