中東が混迷を深める理由とは? 黒木英充、鈴木恵美、高橋和夫、萱野稔人、春香クリスティーンが議論(1)
シリアの汚職問題
萱野:次、例えば、シリアで政府軍の戦いと反政府軍。イスラム国もあればイスラム戦線もあるんですけど、彼らも反汚職として戦ってるんですか、もともとは。 黒木:汚職の問題はシリアも汚職でしたし、今の要するに縁故主義ですね。それはもうありましたよね。で、ただ、始まりは治安機関の暴力ですね。それに対する講義ですよね。ですから、エジプトなりチュニジアなりで人が町に出て、デモができるっていう、その感じを、感覚を持った人たちが、要するにそれまでのシリアでは考えられなかったことだったんですが、この暴力はないだろうと、子供を拷問したっていうですね。で、それに対する、だから、そもそもの最初はその拷問をした治安機関の人間をちゃんと処罰しろということが始まりだったわけですね。 ですから、その背後にはその都市の問題とか、人口、若者の問題とか、そこが結局、縁故主義につながっていくとか、腐敗の問題も含めてずっとそこに収斂していって、だんだんあとは外から、先ほど鈴木さんがリビアの武器がエジプトに入ってるっていう話がありましたけども、リビアの武器はシリアにもたくさん入って、人もたくさん来ましたしね。そういう形でいろんな、お金が流れ、武器が流れていったっていうことですよね。 萱野:春香さん、なんか質問ありますか。今の話で聞きたいことっていうのは。 春香クリスティーン:そうですね。なかなか広く、いろいろな議論がありましたけど。
中東の国境意識
萱野:そうですよね。いや、僕聞いててもうちょっと聞きたいなと思ったのは、リビアの武器が例えば、中東中に広がるじゃないですか。そんな簡単に国境を越えられるのかな。超えられるのかな、あの地域っていうのは、そんなに簡単に国境を越えることって簡単なのかっていう疑問なんですけど、実際どうなんですか。 高橋:やっぱり国の力が弱いですよね。だから、政府はある意味、税金を集める力もないし、一応、国境は管理してるんですけどね、長い国境線で、管理してないことは砂漠で渡っちゃえば簡単ですし、地中海なんて船で自由には行き来できないんですけど、自由に行き来してますよね、勝手にね。ですから、日本人は割と国境っていうのがびしっとあって、それをなんか守ってるという雰囲気があるんですけど、たぶん中東の人は、世界のグローバルスタンダードは、自分たちのほうが昔から勝手に動いてて、国境のほうからあとから来て失礼なやつらだなと。なんでパスポートなんて持たないといけないんだっていう感情のほうがたぶん、素直だと思いますね。 萱野:中東の人にはかなりその意識、強いですか。 高橋:そうですね。かつては1つの国でしたし、言葉も通じますし、そういう意味ではそれは非常に中東的だって思うかもしれないですけど、アメリカに行けば非合法で住んでるヒスパニックの人が何百万人といて、それは当たり前のことですよね。ですから、ある意味、日本が異常なのかもしれないと私は思うんですけどね。 --------------------------- ※書き起こしは、次回「第2部」に続きます。