バイオミメティクス、「ミミズの下水道検査ロボット」は2~3年で実用化へ
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生き物が持つ体の仕組みを製品や技術に応用する技術をバイオミメティクス(生物模倣技術)という。ミミズやカタツムリといった生物を応用したロボットの研究、開発に取り組む中央大学理工学部精密機械工学科の中村太郎教授が、その研究成果を発表すると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や産業界が高い関心を示し、数多くの共同研究に発展した。一体、生き物のどのような仕組みを応用したのか、そして、それはどのような働きをするロボットなのだろうか。
宇宙や深海など「極限環境」での活躍に期待
床の上を、球型の部品をいくつも連結させたミミズロボットが前進していく。その姿は、まさしくミミズの動きだった。 「生物は、それぞれの生育環境に長い時をかけて適応し、進化を遂げてきました。中には、人間が入れないような環境で生きる生物もいます。こうした生物を模倣することで、ユニークで役に立つロボットが作ることができるのです」と中村教授は説明する。 生物が持っている優れた機能や仕組みを、製品などに応用するバイオミメティクス。古くは、絹糸をまねて生まれたナイロンがそうであり、近年でも、鳥の羽をまねたプロペラや、ヤモリの足裏の構造を参考にした接着テープなど、国内外の企業で製品づくりに応用する取り組みが多数見られる。 中村教授が、生物にヒントを得たロボットの研究に着手したのは、秋田県立大学で講師を務めていた2000年のことで、2004年には現在の中央大学に着任。今日までに研究、発表したのは、ミミズロボットのほか、カタツムリロボット、アメンボロボットなど。これらの成果は注目を集め、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や企業との共同研究に発展、2014年における共同研究の数は15件に達した。現在、これらも含めて、宇宙や深海など簡単に行けない環境で活躍する『極限環境ロボット』の研究開発に取り組んでいる。 ミミズロボットの着想は、秋田県立大学の周囲にあった田んぼで得た。徒歩で大学へ通勤する途中、よくミミズをじっくり観察していたのだという。 「ミミズは、蛇とは違う動きで前に進んでいるのです。その特徴的な動きに魅せられましたし、直感的にこれは役に立つという気がしたのです」。左右に動きながら動く蛇とは違って、ミミズは、体の各部分が伸び縮みするような動作をしながら前進していた。