【失敗しない老人ホーム選び】「動けるうちに視察」が鉄則、入居費用に「どこまでのサービスが含まれているか」の確認も
神奈川県在住の70代男性は、終の棲家である老人ホーム選びに失敗したと嘆息する。
「4つ下の妻が3年前にパーキンソン病を発症し、要支援2に。その後は自宅で介護していましたが、転倒や攻撃的言動が増すなど認知症の兆候が現われ始めたので自宅での介護を断念しました。 そこで、家から近く利用料が安めの介護付き有料老人ホームに入居しましたが、衛生面に不安があるとか、食事ケアが雑とか、後になって施設の悪評を知り……。サービスが合わなかったのか、入居後2年足らずで妻の要介護度が2段階も上がってしまいました」 情報を精査せずに施設を選んでしまったことが悔やまれるという。老人ホームアドバイザーの伊藤直剛氏が言う。 「できれば自宅での生活が厳しくなる前に施設選びを始めるのが望ましい。入居後に後悔するパターンで多いのが、家族や親族の意向を優先し決めてしまったケース。本人が動けるうちに施設を見学し、家族と話し合って吟味するのが理想です」 地域によっては人気の施設に空きがないことも多い。近年は「要支援認定を受ける前」から入居先を探し、希望する施設の入居に必要な費用を目安に資金を準備する人も増え始めているという。
希望に合わなければクーリングオフも可能
施設探しで重要なのが、入居費用に「どこまでのサービスが含まれているか」の確認だ。 「通院付き添いや買い物の代行、助成金の申請手続きやリハビリなどのサービスは、月々の基本利用料とは別のオプションになっている場合があります。『請求書が来て驚いた』とならないよう、何が有料オプションになっているか、事前の確認が必須です」(伊藤氏) 介護面だけでなく、「看護や医療の体制」についても確認したい。 「医療機関の受診や投薬治療などが必要になった場合、その施設でどこまで対応できる体制があるのか、また、入院が必要な場合にどんな医療機関と連携しているかといった点の確認は非常に大切です」(同前) そのほかにも事前に確認すべきポイントがある。 「食事のメニュー構成はもちろん、毎日の献立にどんな変化がつくのか、レクリエーションなどのイベントはどんな内容かなど、細かな点まで聞くと、入居後の生活がイメージしやすい。QOLを維持するうえで大事な観点です」(同前) そうしたことを知るうえで役立つのが「体験入居」だ。 有料老人ホームにはベッドや収納家具などが部屋付きになっているので、旅行のような感覚で体験できるケースが多い。 「万が一、入居後に希望に合わないと判断した場合、3か月以内ならクーリングオフが可能で、解約すれば入居金などは返還されます。本人の希望や身体の状態、医療処置の必要性に応じ、入居先を変更する人もいます」(同前) 元気なうちの施設選びを心がけたい。 ※週刊ポスト2025年1月3・10日号