余った去年のお米どうする?「古米」を美味しく復活させる方法を五ツ星お米マイスターが指南!
水を濾過してくれる「備長炭」を入れて炊く
さらに、ネットなどでは、古米にみりんや酒を入れて再生させる方法なども提案されていますが、それって実際はいかがですか? 「みりんや酒を加えると、もはや調理したごはんになってしまうので、白米のよさはなくなってしまいます。氷を入れると水加減がアバウトになるし、塩を入れると塩むすびになる。はちみつは、炊飯器の圧力弁を糖分で壊す可能性があります。いろいろな方法がありますが、今の炊飯器の状況を考えると全部アウトな印象です。 どうしても入れたい場合は、炊飯器でおすすめなのは備長炭。炭には浄水効果があり、キレイな水へと濾過してくれます。備長炭を入れて一緒に炊くと、炭の浄水効果で米が吸水しやすい水へと変わるので、ツヤと甘みが出てくる。これは伝統的な昔からの復活法です。 炊飯器の中で米が滞留する時に、大きい炭は炊飯器の内釜を削ってしまう可能性があるので、親指くらいの小さめな備長炭を使ってください。竹炭はすぐにボロボロになりますが、備長炭なら長持ち。何度も使うと木目が詰まってきますが、定期的に煮沸すれば木目に詰まった汚れが流れるので、何度も使用できますよ」 古米が復活するあらゆる方法を教えてくれた西島さんの最後の手段は……。 「これだけいろいろやってダメなら、丼ぶりやカレー、チャーハンにして、最後は味でごまかすしかない!(笑) ドライカレーがいちばんごまかせますよ!」 確かに!(笑) 白米だけで食べると味落ちを感じやすいため、濃い味付けに頼るのもひとつの手ですね。 今回取材して感じたのは、日本人は米と密接に暮らしてきたゆえ、古米を美味しく食べる知恵を昔の人はしっかり持っていたということ。 「米は昔の主食だから、美味しく食べるための逃げ道はいろいろあるよ」と、西島さんが話してくれたように、昔の人たちは最後まで無駄にすることなく、米を大切にしていたのだと改めて感じました。 洋食文化が浸透し、生活スタイルも多様化した現代ですが、このような方法を知っておくことは、食品ロスにつながり、暮らしを豊かにする支えになると思います。米と共に歩んできた日本人だからこそ、知っておきたい知恵ですね。古米がある人は、ぜひ試してみてください!
西島豊造
五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しい米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。
岸綾香