「昔のほうがよかった」とは全く思わない――東村アキコが考える「恋愛」「お金」「漫画」の今
『東京タラレバ娘』シーズン1の連載開始は2014年、主人公は33歳の脚本家・倫子。新シリーズは19年に始まり、アルバイトをしながら実家で暮らす30歳の令菜が主人公だ。東村は周りの人たちに影響を受けて描く。5年の変化をどう感じたのだろうか。 「前はもう少しゴージャスだったけど、より慎ましくなった気がします。今の若い子たちは生活が省エネで、経済観念がしっかりしてる。無駄遣いはしないし、ほしいものもメルカリで探したりしてやりくりする。お酒もあんまり飲まなくて、コンビニスイーツを食べながらNetflixを見ているだけでも十分満たされる。私も影響されて、お酒を飲まなくなりました」 「恋愛も、二極化していると思っていて。恋愛至上主義の子と全然興味がない子がいる。私が10代のころは、修学旅行でみんなが『好きな人、誰?』みたいなことをしゃべっていましたが、今は『恋をしようよ』と言うのもハラスメントになりかねない。結婚についても、私は2回離婚してますし、結婚したら幸せになれるなんて全く思ってないけれど、幸せなご夫婦を見るといいもんだなと。そういうパートナーが見つかるならいいんじゃないかと思うけど、それを声高に言うのも少し違ってきている」
社会は時代とともに変わるもので、「昔話をしても仕方がない」と話す。 「『今より昔のほうがよかった』とは全く思わない。若い時、『昔はこうだった』と言う人たちを見て、私は絶対こうはならないって思ってて。今、片足突っ込んではいるんですけど、若い子の気持ちも分かることが作家として大事。例えば、いくえみ綾先生は私より年上ですけど、あんなに若い子の気持ちをみずみずしく描けるということは、『昔はよかった』とは思っていない。ベテランの先生方の漫画を読んでいると、その時代にバッとチャンネルを合わせられないとダメなんだなって」 「私も、今の人の気持ちをちゃんと理解したいと思っています。アシスタントには若い子にも来てもらっています。一緒に仕事してると、情報が自然と入ってくる。おばさんになって疎くなっているから、本当にありがたいですね。ネットニュースも、レコメンドシステムでしょ? 私のスマホに出てくるの、K-POPと吉本と野球ぐらいよ。自分の画面ばかり見ていてもしようがないんです」