「昔のほうがよかった」とは全く思わない――東村アキコが考える「恋愛」「お金」「漫画」の今
ゴシップライターとして慌ただしい日々を送る30歳の遥が、憧れの俳優のニュースを書くうち、12歳のころに好きだった「あの子」をふと思い出し――というストーリー。連載開始当初、韓国での反響は日本とは異なるものだった。 「日本の漫画って、わりとスロースタートなんです。最近は少し違うかもしれないけど、ずっと片思いをして、やっと恋が実るというのを10巻くらいでやる。秘めた愛とか、遠くから見るという文化もあります。韓国はドラマを見たら分かるように、トップギアスタート。最初からトキメキマックスで、スピードが速い。だから私の漫画は、まどろっこしく感じる人も多かったみたい。でも、『このままでいい』と思って。『もっとトキメキシーンを入れて』とも言われたけど、『ドラゴンボール』の戦闘力みたいにインフレするのもなんですから」
韓国の読者の反応も、「最初はもどかしかったけど、面白くなってきた」と次第に変化した。 「もちろん日本の読者の声もさまざまですが、自分の中に描きたいストーリーがあるので、変えるわけにもいかない。エゴサーチもしないです。うつになってしまうようなものはなるべく見ない。楽しく描いていると、漫画を読んだ人にもその楽しさが伝わると思うんです。やっぱり楽しく読んでほしいので」
海外も日本の中高生もウェブトゥーンを読む
『私のことを憶えていますか』の連載は、縦スクロール形式、オールカラーだ。縦スクロールのウェブ漫画、電子書籍、紙のコミックという三つの形式で作品を展開する。 スマホで漫画を読む習慣が広がるなか、韓国発のオールカラー縦スクロール漫画「ウェブトゥーン」市場が拡大し、アジアや北米で主流になっている。東村は2017年に日本の漫画家で初めて、韓国ウェブ漫画市場で『偽装不倫』を連載した。 「周囲からは『なんで縦やってるの?』と聞かれるんです。芸人さんに『なんでYouTube始めたの? テレビいつも出てるのに』と言うのに似ていると感じます。でも、スマホで読む時、漫画以外はみんな縦ですよね。海外は漫画も縦。日本では横で読んでる人も多いですが、若い人は縦です。ここ3年くらいで、シェアが大きく変わってきていると思います」 「数年前、福岡の中学校に講演に行ったんです。『漫画雑誌を定期購読している人、手を挙げて』と言ったら、3人だけ。でも、ウェブトゥーンの『外見至上主義』って漫画はみんな知っていた」