「昔のほうがよかった」とは全く思わない――東村アキコが考える「恋愛」「お金」「漫画」の今
「老婆心ながら」と前置きし、こんなふうにも言う。 「あんまり慎ましいと、他者と摩擦が起きないんじゃないかと心配しています。摩擦がないとエピソードが生まれない。摩擦の例としては、『衝動買い』もしたほうがいいと思います。予定調和の流れが多少乱れる瞬間があったほうがいい。私もそんなにお金を使うほうじゃないんですけど、ハワイですごく高い時計を買ったことがある。はっきり言うと、98万。『中古車買えるじゃん!』と思ったけど、知り合いに問答無用で薦められて。でもね、それとともに人生を歩んでるし、高い時計を買う人の気持ちも分かった。身の丈に合わないものに引っ張り上げられて、視野が広がったんです。たまにはそういう“訳の分からん”ことをすると、視点を変えられると思いますね」 「恋愛もハプニングからパートナーを見つけた人って多いでしょ? うっかり飲みすぎて酔いつぶれるシチュエーションがなかったら、そうそう始まらない。私の漫画のファン同士で集まって、婚活をがんばってる子たちのLINEグループがあるんですよ。コロナになってから、もうダメだ……っていう空気になってますよね。婚活組はコロナで大打撃です……」
韓国エンタメは、最初からトキメキマックス
『私のことを憶えていますか』では日韓同時連載にトライしている。日本の電子漫画サービス「ピッコマ」と韓国の「カカオページ」で、同じ時刻にそれぞれの言語で最新話を配信。今後はタイ、インドネシア、台湾などでも連載される予定だ。「初恋」を選んだのは、ボーダーレスを意識した結果でもある。 「韓国の人に、『ファンタジーを描けませんか』と言われて。タイムスリップとか幽霊とか。世界で売り出すにあたって、ファンタジーなら国境を超える共通テーマだから、と。韓国の場合、世界で売るのは最初から織り込み済み。でも私はファンタジーは描けないなと思って、初恋ならどうかと。世界中の老若男女が、同じように記憶に残っていることの一つ。実際、日本でも韓国でも、読んだ人たちが自分の初恋について語り出すんです」 「私もこの年になって、幼なじみ同士で結婚とか、もしかしたら一番ロマンチックなんじゃないかと思うようになった。都会や仕事で知り合ったイケてる人も、幼なじみも、結局みんな一緒なのよ。それなら思い出を共有している幼なじみでよかったんじゃないか、と言うアラフォーの仲間が周りにけっこういます」