<地下鉄サリン20年>オウムの本質はサリン事件の頃と「変わらない」
アレフ(主流派)とひかりの輪(上祐派)
地下鉄サリン事件の翌年の1996年、公安調査庁長官は、破壊活動防止法に基づき、公安審査委員会にオウム真理教の解散処分請求を行いましたが、既に主要幹部のほとんどが逮捕され、厳しい衆目監視下のオウム真理教に「将来の明らかな危険性があるとは認められない」との同委員会の判断で、請求が棄却されてしまいました。 しかし、あれほどの事件を起こしたオウム真理教です。もう危険性がなくなったとは世間の誰もが認めてはいませんでした。事実、教団は、各所に拠点施設を確保したため、教団によるテロや反社会的行動を恐れる地域住民により激しい反対運動が起き、トラブルが絶えませんでした。 そこで、1999年12月に「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(略称「団体規制法」)が成立し、年内に施行されました。この法律は、オウム真理教の危険性を引き続き明らかにする必要があることから、3年を超えない期間(更新可能)を定めて、教団に対し公安調査庁長官の観察に付する処分を行うことができるというもので、今年1月、5回目の更新が公安審査委員会によって認められました。 教団の欺瞞性はこれでも衰えを見せません。オウム真理教時代の汚名から人々の目を逸らし、観察処分から逃れるために、組織名を「アレフ」に変え(2000年2月)、責任者となった上祐は、麻原の影響力はもはや存在しないと主張しました。さらに、麻原の扱いをめぐって教団内部で対立が生じたため、上祐ほかが「アレフ」から分離して「ひかりの輪」を創設(2007年5月)し、麻原に関するビデオや機材を施設内から取り除き、「麻原隠し」を進めました。 しかし、それもこれも、団体規制法を何とかすり抜けようとする方便としか思えません。主流派の施設内では、今も麻原の写真を堂々と掲げており、麻原を絶対的に信奉する信者の心が今も変わっていないことが分かります。しかも、一連の事件に関与し、裁判で有期刑に処された信徒たちの中には刑務所からの出所後、教団に次々と戻ってくる者がいるという報告もあります。 こうした実態を見ると、教団の本質は、サリン事件の頃と何も変わっていないのではないでしょうか。少なくとも、このように見られても仕方ありません。こうした教団に対し、今後も解明しなくてはならないことは山ほどあると思いますし、国民の安全と安心を確保するためには、観察処分は是非とも必要な作業なのだと思います。