ふかわりょうが“サイテー男”の小説に込めた思い 「B面があるからA面がある」その言葉の真意は
40歳の独身男性が、結婚をするために、いいひとを辞めて、サイテー男を目指すーー。お笑い芸人、番組MC、DJ、エッセイスト……さまざまな顔を持つふかわりょうさんが初の書き下ろし小説『いいひと、辞めました』を上梓した。コンプライアンス全盛の今、ふかわさんが描き出したかったものとは。今の時代だからこそ生まれた作品の背景と思いを聞いた。 【写真】「良い子の手の届かない所に保管してください」と書かれている ■10年前には書けなかった物語 世の中のモテている男は、なぜかサイテー男ばかり。
誰からも「いいひと」と言われる四十路の主人公・平田が、結婚をするために「いいひと」を辞め、サイテー男になることを目指して、「サイテー男養成所(通称、クズ専)」に通うーー。 そんなふかわりょうさんの書き下ろし小説『いいひと、辞めました』では、ひとクセもふたクセもある人たちが、この令和の時代にちょっと人前で口にするのは憚(はばか)られるようなセリフを吐き、行動をする。 しかし、不思議と、そこに嫌悪感はあまりない。
それは登場人物たちの憎めないキャラクターによるところもあるが、ふかわさんが描き出した世界観が、“今の時代に読むべきもの”として目の前に広がっているからだろう。 「無自覚に、時代の風って浴びていると思うんです。それに自分の思想や価値観、おもしろがっていることって、時代との交差点のような場所にあると思うんですよね。 自分の頭の中に散らばっているものや言葉が、時代の風向き、時代の風によって作られた渦に乗って集まり、その交差点でできたのが今回の作品。そういう意味では、10年前にはこういう作品は作らなかったと思う」
小説として着手したのは1年以上前のこと。 それなりの時間や工程を経ているが、書き出した頃より「その渦が、より強くうねり出した実感はある」という。 ■あえてコンプラ無視の内容に ふかわさんといえば、お笑い芸人として「小心者克服講座」でブレイクし、現在は番組MC、DJ、エッセイストなど、独自の視点と感性を武器に幅広いジャンルで活躍している。 「普段、仕事をするうえでコンプライアンスは無視できませんが、今回の作品では特に意識していません。むしろ、人々がそういうものに直面したときに、どう受け止めるか。(そこを描きたくて)ルールはそんなに重視していない」そうだ。