清らかな音を未来へ…300年の歴史が残る梵鐘を新調 奥野部の長安寺/京都府福知山市
京都府福知山市奥野部の臨済宗南禅寺派・長安寺(正木義昭住職)の梵鐘が新調された。300年以上残る歴史あるものだったが、長年の劣化を受けて交換。従来の姿を忠実に再現し、新たに生まれ変わった鐘が周囲に清らかな音を響かせている。 同寺の梵鐘は、正徳3年(1713)には境内にあったとされており、大きさは高さ130センチ、口径は70センチほど。市の重要文化財にも指定されている歴史あるもので、その価値が認められ、戦時中に各地で行われた供出の際にも回収を免れるほどだったという。 長年にわたって音色を響かせ、原爆投下の日に合わせて毎年8月に行う「平和の鐘」や大みそかの除夜の鐘などでも地域に親しまれていたが、近年は劣化が進み、正木住職(65)は「鐘をついた時の音もどこか以前のものとは異なってきていて、今年に入り交換することを決めました」と話す。 新しい梵鐘は、京都市内の専門業者に鋳造を依頼。従来と全く同じ外観にこだわり、大きさや形のほか、刻印された銘文、唐草をあしらった文様などを忠実に再現している。鐘をつく撞木も新調し、11日に入れ替え作業を行った。これまでの鐘は大切に保管されている。 同寺では31日午後11時30分から毎年除夜の鐘つきを行っていて、今年も実施予定。参拝した人は誰でも新しくなった梵鐘をつくことができる。 正木住職は「新しい梵鐘は音が良く、余韻も長く残ります。清らかな音を聞いて一年の心のあかを落とし、清浄な心で新年を迎えてもらえたら」と話している。