GT500クラスはブリヂストンユーザーが12/15台という超大所帯に。格差拡大が懸念される中、少数派タイヤメーカーへの“救済措置”は現状妥当か?
■埋めがたい“差”
ただその“非主タイヤ開発メーカー”の担当者としては、このような救済措置があったとしても依然としてブリヂストンとの差を埋めるのは簡単ではないと考えている。 ダンロップタイヤを供給する住友ゴムの安田恵直氏は、「やはり性能差を埋めていきたいということで、プラスの走行時間をいただいてはいるのですが、やはり台数の差というのは大きく、その差を埋めるのはかなり厳しいかなと思います」と語る。その台数の差については「GTA公式テスト前までのテスト参加台数の累積で言えば、BS(ブリヂストン)さんは約40台くらい、うちはセパンと鈴鹿で1回ずつで2台……それだけで約20倍の差があります」と説明した。 そして横浜ゴムの白石貴之氏は、現状トヨタ、日産、ホンダの3メーカーが持つ開発車両が全てブリヂストンタイヤをメインにしてテストを行なっている点が特に痛手だと語る。 「台数のところもありますが、GT500は開発車両を持っているか持っていないかも大きいと思っています」と白石氏は言う。 「今年はBSさんが全ての開発車両を持っているので、チーム車両の走行時間に加えて、開発車の走行時間……その差がダブルで効いてしまっています」 「また、開発車両をベースに開発が進んでいくという部分もありますので、その開発車両をBSさんが使っているとなると、そもそもの“スタートライン”も違ってきてしまうと思っています」 「こうした差を少しでも埋められるように、(GTAに)ご相談をさせていただいているという形です」 では、タイヤメーカー間の差を埋めるために、ヨコハマやダンロップに無尽蔵なテスト機会を与えればいいのかと言われれば、そう単純な話でもない。住友ゴムの安田氏は、次のように指摘する。 「仮に台数の差を時間の差で埋めようとすると、今度は自動車メーカー間で差ができてしまいます。そういう意味ではどうしようもないというか……全てを公平にやることは難しいとは思います」 つまり、例えばダンロップのテスト時間が無制限になった場合、GT500で唯一ダンロップタイヤを履くホンダのシビックが優位になってしまう恐れがあるのだ。2輪ロードレース最高峰のMotoGPでは、苦戦するバイクメーカーに対しての優遇措置が機能した結果、欧州メーカーの躍進に繋がったという経緯があるが、MotoGPはタイヤがワンメイク。車体、タイヤ共にマルチメイクなスーパーGTにおいて、様々なバランスをとることは容易ではなさそうだ。
【関連記事】
- ■冷たく降る雨の裏で、今年もアツいスーパーGTウエットタイヤ戦線。各社の新トレッドパターンがあらわに……ミシュランはGT500席巻したパターンをGT300でテスト
- ■デビューの時が迫るホンダ シビック・タイプR-GT。鍵は“スイートスポット探し”? 山本尚貴「まだ良いところが見つかりそうなので、煮詰めていきたい」
- ■超異色! ラジコン世界一からカート経験ゼロでレースの世界へ……たった3年弱でスバルのスーパーGTオーディションドライバーまで漕ぎ着けた奥本隼士とは何者か
- ■雨のスーパーGT公式テストでGT500最速を記録したヨコハマタイヤ。ダンプ路面に強いトレッドパターンはGT300でも採用の方向
- ■スーパーGT、『レースクイーン』の性別指定を撤廃し『レースアンバサダー』に呼称変更。シリーズにおける重要な存在……その役割を再定義