GT500クラスはブリヂストンユーザーが12/15台という超大所帯に。格差拡大が懸念される中、少数派タイヤメーカーへの“救済措置”は現状妥当か?
■“マイノリティ”ながらタイトル争ったミシュランに聞く
ブリヂストンユーザーがGT500で“マジョリティ”であることは今に始まったことではないが、“マイノリティ”という立場でありながらブリヂストンユーザーとタイトルを争ったタイヤメーカーがある。それがミシュランだ。 ミシュランは昨年までGT500クラスでタイヤを供給。ここ10年ほどは日産陣営への2台供給が基本となっており、2015年にはNISMOのチャンピオン獲得に貢献した。これは、ブリヂストン以外のタイヤを履くチームの最後のタイトルとなっている。 昨年はチャンピオンを獲得して有終の美……とはならなかったものの、雨のレースでの強さも活かしつつ、NDDP RACINGのシリーズ2位、NISMOのシリーズ3位に貢献したミシュラン。小田島広明モータースポーツダイレクターは、供給台数が多いメーカー、少ないメーカーのメリット、デメリットについてこう説明する。 「マイノリティ、マジョリティの論議は昔から常にありました。必ずしもどちらかが有利だとか不利だとか、そういうことではないと思います」 「例えば、マイノリティであれば車種の特性やドライバーの要望に合わせた開発ができる。マジョリティであればn数(サンプル数)が増えるので取りこぼしが少なくなる、といったメリットがあります」 「一方で、タイヤメーカーが負担をしないといけない生産面に関しては、マジョリティのメーカーさんは大変ですし、マイノリティは何かに特化したタイヤとはいえ生産する総数が少ないので、製造コストという点では多少楽になります。一概にどちらかが良い悪いではありませんが、コンディションやレースの状況によってそれが良い方悪い方に出ると思います」 供給台数の多さに関しては、ブリヂストンの山本氏もメリットとデメリットがあると話していた。例えばこれまで何度も指摘されてきたように、非常に多くのデータを集められる点はメリット。一方でミシュラン小田島氏も指摘した生産面は、生産期間が長くなる関係上「早めにタイヤのスペックを決めないといけないというデメリットもある」と言う。 では、先に指摘された開発車両を持つメリットについてはどうか? これまで、日産/ニスモ陣営の開発車両である230号車でテストをしてきたミシュランの小田島氏に聞いた。 「(メリットは)正直、大きいと思います」と認める小田島氏。しかしその一方で、「ただ我々も最初から開発車両を使い、ニスモさんのワークスのような体制でやらせていただいたわけではない」と続ける。彼らは開発車両を活用していない頃から実力を示してきた上に、トヨタ陣営やホンダ陣営の車両に1台だけタイヤを供給していた時も、陣営の中でランキングトップに立ったこともある。その自負は大きいのだ。 「主タイヤ開発メーカーでない時も、その環境で実力を示すのが大事だと思っています」と小田島氏はコメントを締め括った。 そんなミシュランが去った2024年のGT500。昨年以上に“マイノリティ”となったヨコハマとダンロップにとって簡単な戦いにはならないことは確かだろう。「ご存知の通りなかなか厳しい状況ではありますが、昨年1勝できたところに弾みをつけて、それと同じかそれ以上の勝利が獲れるように頑張っていきたい(ヨコハマ白石氏)」「鈴鹿はひとつのターゲットになる。もちろんそこだけではありませんが、まず鈴鹿で良い成績を残したい(ダンロップ安田氏)」とそれぞれ意気込みを語る。 上記2メーカーが、絶対王者ブリヂストンにどこまで対抗できるか? そしてタイヤコンペティションを継続させたい旨を常々公言しているGTAは、ここから更なる戦力均衡策を打ち出してくることはあるのか? タイヤ戦争の行方には、引き続き注目してきたい。
戎井健一郎
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