インフラ点検「億円単位で節約」・可搬重量40kg…最新ドローン、それぞれの効果
「第10回国際ドローン展」に新製品・新技術
飛行ロボット(ドローン)の社会実装が着実に進んでいる。送電線や橋などのインフラ点検に始まり、物流用途でも過疎地や離島で活用の動きが広がってきた。ドローンはほかの輸送機に比べて軽量・小型で、道路渋滞などの影響も受けないのが強み。広域災害でのドローンの有用性が確認され、物流や保守点検業界の人手不足の状況も相まってドローンに寄せる期待は一層高まっている。24日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した「第10回国際ドローン展」でもメーカーの新製品・新技術が並び、会場は熱気に包まれた。(編集委員・嶋田歩) 【写真】最大積載荷重40kgの大型ドローン 現在、ドローンの利用で先行しているのはインフラ点検向けだ。生活に不可欠な橋や道路、ダムなどは建設後数十年が経過して老朽化したものが多くある一方、点検要員は高齢化や人口減少などで不足している。 ブルーイノベーションはこうした社会環境を背景に、電力会社や屋内プラント点検向けに、球体ドローンをはじめ、さまざまなドローンサービスを展開している。平原翔ソリューション営業一部シニアマネージャーは「火力発電所のボイラなどの点検は足場作業を含めると2週間近くかかり、期間損失が甚大だった。ドローン点検だと足場構築の必要がなく迅速化でき、数千万―数億円単位の費用の節約になる」と力説する。 九電ドローンサービス(福岡市中央区)も火力発電所を中心にドローン点検を活用。天井やメーターの監視は米スカイディオ製、煙突内やボイラ内点検はブルーイノベーションが扱う球体ドローン、密集場所や狭小空間はリベラウェア(千葉市中央区)製と、場所に応じてドローンを使い分けている。現在約140機のドローンで点検実証を行い、ノウハウを積んでおり「今後、ほかの電力会社や非電力会社にも売り込みたい」(担当者)と外販も視野に入れる。 物流向けでも市場開拓が進む。慢性的な人手不足に加え、国土交通省が離島や過疎地の上空などの飛行申請手続きや規制を緩和したこともドローン事業者に追い風となる。 ACSLの可搬重量5キログラム台の物流専用ドローンをはじめ、可搬重量が30キログラムや40キログラムのハイパワードローンも登場してきている。サイトテック(山梨県身延町)製の可搬重量40キログラムの運搬ドローンで事業を行う協栄産業では「山奥の設備などで電力会社が使う資材や塗料缶の運搬需要が伸びている」(佐野智久ビジネスイノベーション課長)という。山奥の森林地帯は道路での運搬には限界があるだけに、ドローンの特性が生きる。 山奥や離島などでは携帯電話の電波が利用できない場所も多い。また東京都心のような都市部でも利用が集中して回線がつながりにくくなったり、ビル影で電波が届かないなどの事態が起きる。 キャスレーディープイノベーションズ(東京都渋谷区)は、秘密分散技術と衛星通信サービス「スターリンク」を利用したドローンデータのリアルタイム映像伝送システム「ディキャスター」の提供を始めた。「雑踏警備や地震を想定した災害救助訓練など緊急の場合にすばやく対応できる」(事業推進室)という。 日本鯨類研究所(東京都中央区)は、水素燃料電池を搭載した固定翼ドローンを開発中だ。可搬重量10キログラムで航続距離200キロメートル以上を目標としている。人工知能(AI)や関連技術が進歩し、実装が進めばドローン市場の成長に一層拍車がかかりそうだ。