石破首相「中選挙区連記制」を意識 衆院選挙制度、各党協議へ
衆院選挙制度の見直し議論が、24日に召集される通常国会で再燃する可能性がある。 現行の小選挙区比例代表並立制が抱える問題点が多く指摘される中、石破茂首相(自民党総裁)は各党による協議の必要性を強調。「中選挙区連記制」導入論も意識し、選挙制度改革をてこにした与野党連携を模索しているとみられる。 【ひと目でわかるグラフ】内閣支持率の推移 「より幅広い民意が反映されることが重要だ。約30年の歴史を踏まえ、党派を超えた検証が必要だ」。首相は6日の年頭記者会見でこう述べ、1994年に成立した政治改革関連法に基づく衆院選挙制度の再検討に意欲を示した。首相が就任前の昨年8月に「一つの選択肢だ」と前向きな姿勢を示していたのが中選挙区連記制だった。 連記制は、選挙区の定数を2人以上とし、有権者が複数の候補者に投票できる制度。自民の候補同士が争い、派閥間の競争や有権者へのサービス合戦など「金権選挙」が批判されたかつての中選挙区制とは異なり、多様な人材や民意を反映できるとされる。中小政党にもメリットが及ぶ可能性がある。 通常国会では、衆院選挙制度改革に関する与野党協議会が設置される。「1票の格差」是正などと合わせ、中選挙区制復活や連記制導入の是非が焦点の一つとなるとみられる。 現行制度は、リクルート事件などを受け「カネのかからない選挙」を目指して導入されたが、自民派閥の裏金事件などその後も続発した「政治とカネ」の問題で理念の空洞化ぶりが明らかになった。比例代表との重複立候補や、世論の「風」に選挙結果が左右されやすい点にも疑義が投げ掛けられている。 30年前の「平成の政治改革」に関わった元衆院議員からは中選挙区制復活論が上がる。当時自民総裁だった河野洋平元衆院議長は女性議員の拡大へ「中選挙区で複数(候補)が当選する制度にしなければ」と指摘し、田中秀征元経済企画庁長官は中選挙区連記制の導入を提唱している。 自民の閣僚経験者は「連記制実現を通じた与野党連立で局面を転換すべきだ」と期待をにじませた。だが、通常国会は25年度予算案などの懸案が山積。夏の参院選を控え、野党の関心も「103万円の壁」見直しや教育無償化などまちまちで、選挙制度議論の優先順位が高まるかは見通せない。政府関係者は「小選挙区導入までに政権が二つ倒れた。簡単ではない」と指摘した。