果樹の花粉輸入が激減 中国での火傷病影響 増量剤原料も不安定化
果樹の人工授粉に使う花粉の輸入量が激減していることが分かった。植物防疫所の輸入検査統計によると、梨とリンゴの今年1~8月の輸入量はほぼゼロ。中国産花粉が、同国での火傷病発生で2023年に輸入停止となったことが響いた。キウイフルーツ花粉もニュージーランドでの病害の影響を主因に減少傾向だ。果樹の安定生産へ、花粉の自給強化が重要になっている。花粉の増量剤に使う輸入原料も調達が不安定化し、価格上昇の見方が出ている。 同統計によると、過去10年間、梨とリンゴの輸入花粉は99%以上が中国産。梨花粉は年間400~900キロ輸入されていたが、24年は1~8月でネパールとチリ産の2キロだけ。リンゴ花粉は年間100~300キロの輸入だったが24年1~8月はゼロとなっている。 キウイフルーツ花粉の輸入量は徐々に減少している。約6割を占める主要輸入元・ニュージーランドでのかいよう病の発生拡大などで、健全な花粉の生産が難しくなっている。業界関係者によると、円安や輸送費高騰も重なり、以前は20グラム当たり1万円ほどだった花粉価格は24年は5万円ほどに上昇している。 花粉の希釈に使う増量剤「石松子」も調達しにくくなっている。石松子の原料は、ネパールなどから輸入したヒカゲノカズラの胞子。製造するミツワ(新潟県燕市)によると、豪雨や雨季の長期化が生産にも影響し、23年は例年の輸入量の半分以下しか確保できなかったという。24年も十分量の確保は難しい見込みで、円安や他国業者との獲得競争もあり、「調達価格が上がるのは確実」とする。ヒカゲノカズラの胞子は、同統計は対象外。 農水省によると、梨は授粉面積ベースで約3割を中国産花粉に依存してきたが、輸入停止を受け24年産では各産地で自給の取り組みが進む。キウイフルーツでも自給強化を図る動きがある。 (古田島知則)
日本農業新聞