【現地ルポ】千葉県酒々井町が人口増を他地域からの流入に頼る「ブラックホール型自治体」になった理由
ちなみに、同学部の1年生を除く女子学生の数は、約900人(大学院生を含む)。実数は不明だが、「その多くがこの町に居住している」(地元不動産会社社員)もよう。そのため、酒々井町では特に20歳前後の女性の転入が爆増する。 さらに、町外から流入する若年女性のもうひとつの塊が、成田空港を拠点に働くキャビンアテンダント(CA)やグランドスタッフの女性たちだ。 酒々井町と成田、佐倉両市の物件を取り扱う地元の不動産会社の社長がこう話す。 「京成線沿線では空港関係の方々が多く居住されていますが、酒々井は特にLCC(格安航空会社)で働く女性たちに人気の町です」 家賃が安いから? 「それもありますが、LCCは朝6時台発とか早朝便が多い。酒々井からだとJR、京成線のどちらを使っても30分以内には空港ターミナルに着きますが、早朝便の勤務だと始発の電車に乗っても仕事に遅刻する。 だから午前3~4時の時間帯に空港から迎えの車両が来るのですが、その集合場所が、JR酒々井駅前にあるコンビニの駐車場なんです。そういう事情もあって、LCCの航空会社と提携するマンションが酒々井には多い」 ただ、JALやANAで働く女性も町内に多いという。 「酒々井はJRと京成線の2線・2駅が使え、しかもふたつの駅は徒歩10分もかからない。JRが事故で止まっても、迅速に京成線を使える環境があるので、特に、絶対に遅刻が許されない機内勤務のCAにとっては酒々井が重宝されるんです。なので仕事への意識が高い女性ほど、この町を選ぶ傾向があります」 つまり、酒々井町とは、学生やキャビンアテンダントといった若年女性をのみ込むブラックホールだったというわけだ。ただ、若い世代の存在が町の経済を潤わせているかというと......酒々井町内の美容室の店主がこうこぼす。 「航空会社勤務の女性が特にそうだけど、彼女たちは町の美容室には絶対来ないわね。アパレル店もアウトレット以外だと『しまむら』くらいしかこの町にはないから、みんな銀座や渋谷に行っちゃう......」 町内の居酒屋の店主もこう愚痴る。 「ウチの店では客の8割が順大生。だけど、今どきの学生はホンットに酒を飲まないね! 1000円以下の順大生限定定食ばかり頼まれて、酒も飲まずに1、2時間は居座られるものだから、正直、売り上げがあまり出なくて」 学生以外の町民は飲みに来ないのだろうか? 「この町は都内に通勤する会社員や空港勤務の人たちのベッドタウンだから、みんな都内や成田駅周辺の居酒屋で飲んで帰ってくる。酒々井駅に着いたら家に直帰だよ。町内の店で飲むという需要がないから、新しい居酒屋が出店してもいつの間にか接骨院に変わったりする、ってのがお決まりのパターンでね......」