【遺伝カウンセラーに聞く】高年出産だと、染色体異常がどのくらい増えるの?
出生前検査にはいろいろな種類があって、受ける時期も違う
――妊娠中に受ける染色体の検査について教えてください。 笠島 妊娠したあとに受ける検査は「出生前検査」と総称されています。受けなくてはいけない検査ではないのですが、受けるとなったら、たくさんの種類から選ぶことになります。そして、受けられる時期が決まっていますので注意が必要です。 血液検査で21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーについて調べるNIPTが知られていますが、これは妊娠10週以降に受けられます。妊娠11週から13週の間は、専門的な超音波検査の資格を持つ医師が「NT」と呼ばれる首の後ろのむくみなどいくつかのサインを調べる時期です。NIPTのような精度の高い検査ではありませんが、母体血清マーカー検査(クアトロテスト™)という血液検査もあります。 以上は、いずれも疾患がある可能性だけを調べる検査で、確かに答えが得られるわけではありません。確定診断になる羊水検査は、妊娠15週以降になります。 NIPTを実施する施設については、日本医学会の認証制度が、遺伝カウンセリングや検査前後のサポート体制などを審査して認証をおこなっています。『一緒に考えよう、おなかの赤ちゃんの検査』というウェブサイトには、その認証を受けた施設の全国リストが載っていますし、出生前検査についてひととおりのことがわかります。 ――笠島さんから見た、出生前検査を受けることのメリットとリスクを教えてください。 笠島 羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査は、0.3%ほどですが流産のリスクがあります。でも、こうしたリスクはあっても、事前に病気がわかって、その病気に対応してくれる病院へ転院したり、治療の計画を立てたりできるのは明らかなメリットです。 とはいえ、思わぬ結果を受け取ったときの精神的な衝撃は大きいものです。検査を受けるときはほとんどの人が「この検査を受ければ安心できる」と思って受けるのですが、みんながそうなるわけではありません。 検査を受けたほうがいいいのか、受けないほうがいいのか、そこに正解はなくて、それは、そのときになってみないとわからないところがあります。妊婦さん本人も自分で「こんな気持ちになるなんて」と意外に感じたりします。大事なことは、悩んだときに相談できる専門家がいる医療施設で検査を受けることです。 お話/笠島道子さん 取材・文/河合 蘭 構成/たまひよONLINE編集部 耳慣れない言葉があったかもしれませんが、「命の設計図」についての大切なお話でした。2回目は、受精卵の染色体異常を調べる検査「着床前検査」について聞きます。 聞き手 </h3>河合蘭 さん</h3> PROFILE:1986年より出産、不妊治療、新生児医療に関する取材・執筆活動をスタート。東京医科歯科大学、日本赤十字社助産師学校で非常勤講師も務める。2016年、著書『出生前診断-出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』で科学ジャーナリスト賞を受賞。その他の著書に『未妊-「産む」と決められない』『卵子老化の真実』など。 お話を聞いた先生 </h3>笠島道子さん(かさじまみちこ)</h3> PROFILE:1970年から24年間北里大学病院の臨床検査部で染色体検査に従事。在職中にJAICAの医療協力派遣専門家としてアルジェリアに1年間赴任。1995年から2年間メルボルン大学Reproductive Biology Unitで生殖医療を学ぶ。栃木県の生殖医療専門の中央クリニックで染色体検査の指導と胚の染色体分析に従事。2008年認定遺伝カウンセラーの資格を取得後、京野アートクリニック仙台・高輪、ファティリティクリニック東京、永井マザーズホスピタル、真島クリニックの遺伝カウンセリングを担当。
たまひよ ONLINE編集部