【遺伝カウンセラーに聞く】高年出産だと、染色体異常がどのくらい増えるの?
染色体異常が起きるのは、なぜ?
――染色体異常は、いつ、なぜ起きるのでしょう? 笠島 精子と卵子が受精に向けて準備するとき、「減数分裂」という重要な過程があります。 ヒトの細胞の核にある染色体は1番から22番までの常染色体と一対の性染色体があって、それぞれ母親からもらったもの1本・父親からもらったもの1本の計2本がペアをなしているので通常46本です。 それが、全部子どもに行ってしまうと子どもは合計92本の染色体を持つことになってしまうので、精子や卵子の染色体は半分の23本になってから受精します。これが減数分裂です。 その途中では、染色体を複製したり、遺伝情報を組み換えたりする複雑な作業がいろいろあります。この減数分裂がうまくいかず、染色体が1本もしくは何本かたりない、もしくは多すぎる卵子・精子ができてしまうのが、染色体の数の異常です。 卵子と精子が出会っても妊娠しなかったり、流産したりしてしまう理由の多くは、染色体異常だと考えられています。その割合は女性の年齢によって変わり、年齢が高くなるにつれて異常の割合も大きくなります。 ――精子にも卵子にも、染色体の数の違うものはできますか。 笠島 染色体の異常には、染色体が1本、もしくは何本か多すぎたり少なすぎたりする数の異常と、染色体の数は正しいけれど形が違う異常があります。精子は男性の年齢に関係なく、約3カ月ごとに新しい精子が造られるため、数の違いより染色体の形に変化が起こることのほうが多いと言われています。ところが卵子は、その女性が胎児のときに一生分の卵子が作られ、そのあとは数も減りながら排卵されるときを待ちます。そのため、卵子も女性の年齢だけ年をとることになり、数の違いが起こりやすくなると言われています。 ――何番の染色体でも、数が多かったり少なかったりするのでしょうか。 笠島 そうです。でも大きな染色体は、遺伝子の数も多いので、大きな染色体の数が違うと生まれてくることができません。着床しなかったり、流産したりするからです。生まれてくる確率は高くないけれど、それでもその可能性があるのは、働きのある遺伝子が量も少ない21番、18番、13番の染色体だけです。21番染色体が3本ある21トリソミー(ダウン症候群)の子は、生まれたあとの寿命も延びています。 ――高年齢出産の人の子どもに21トリソミーの起きる確率はどれくらいありますか。 笠島 妊娠16週の時点で見ると、35歳で245分の1、37歳で150分の1、40歳で70分の1ですが、出産時の確率は35歳で0.3%、37歳で0.5%、40歳で1.2%と報告されています。一般的にイメージされているほど高い確率ではありません。