改修工事中の家から男女の遺骨を発見。古代都市ポンペイのライフスタイルも明らかに
ナポリ近郊に位置する古代都市ポンペイで、西暦79年に起きたヴェスヴィオ山の噴火の犠牲となった二人の遺骨が考古学者たちによってこのほど発見された。 ポンペイ考古学公園が8月12日に発表したところでは、出土した男女の遺骨は、改修工事が行われている住宅の仮設寝室から、小さな宝箱とともに発見されたという。「女性はベッドの上で発見され、金貨、銀貨、銅貨、そして金と真珠のイヤリングを含む宝石類が入った小さな宝箱を持っていた」と声明には記されており、男性の遺骨はベッドの足下で発見されたという。 ポンペイ考古学公園が発行しているEジャーナルに掲載された論文によると、軽石が二人の家の隙間を埋め尽くし、ドアが開かなくなってしまったことから、男女は狭い部屋の中に閉じ込められてしまったと考えられる。 二人は火砕流とも呼ばれる高温のガスと、火山性物質に埋もれたことで命を落としたことが判明。西暦79年にヴェスヴィオ山が噴火噴火したことで都市が厚い灰の層に完全に覆われ、何千人ものローマ人が命を落とした。ところが、噴火のおかげでポンペイに住んでいた多くの人の遺骨と建物が図らずも保存されることとなった。 また考古学者たちは、火山が噴火した当時の家の調度品と、その正確な位置を再現できたという。有機物の分解によって灰の中に残された物質を研究チームが解析し、その空洞を鋳造することで再現が可能になった。これにより、木製のベッド、スツール、収納箱、大理石の天板のテーブルなどがあり、ブロンズやガラス、陶器のオブジェ、そして大きな青銅の枝付き燭台が置かれていたことがわかった。今回の発見に際して考古学公園のディレクターを務めるガブリエル・ズクトリーゲルは次のように語る。 「悲劇的な最期を遂げた2人の犠牲者に関連する貴重な人類学的データを分析したことで、古代ポンペイ人の日常生活やミクロの歴史に関するかなりの量の情報を、正確かつ時宜にかなった文書によって整理できたと同時に、ヴェスヴィオ領土の独自性を認識することもできました」 ズクトリーゲルはまた、同国の文化大臣であるジェンナーロ・サンジウリアーノが最近発表した資金投下によって、今後数年間は考古学的発掘による「大きな発展」が期待できると語っている。
ARTnews JAPAN