「カラマーゾフの兄弟」が東大生に人気が高い背景。現代人も考えさせられる、作品のメッセージ
時代を超えて愛される数々の名作。教科書で名前は知っているものの、どんな物語なのか、よくわからない作品もあるのではないでしょうか。『名作に学ぶ人生を切り拓く教訓50』を上梓した東大カルペ・ディエムの西岡壱誠さんが、特に東大生の中で人気がある「カラマーゾフの兄弟」についてお話しします。 『名作に学ぶ人生を切り拓く教訓50』(西岡壱誠)では、時代を超えて愛される数々の名著を解説。 ■読書好きが多い東大生 東大に合格している人は、文系理系問わず、世界各国の名作文学を読んでいる場合が多いです。 芥川龍之介や太宰治、川端康成、谷崎潤一郎といった日本の作家たちの作品も、シェイクスピアや、チャールズ・ディケンズ、ゲーテなどが執筆した世界の名作も読んでいます。
東大生がこれらの文学作品を好んで読むのは、「東大の入試問題は教養がないと解けないものばかりで、文学作品を読んでいる人が有利になるから」といった理由や、「東大の授業で文学作品について触れる授業が多いから」という理由もあります。 そんな東大生たちの中で、ダントツで人気の作品があります。それが、「カラマーゾフの兄弟」です。 フョードル・ドストエフスキーの最後の長編小説であり、世界各国に多くのファンがいる作品です。今回はこの小説の簡単なストーリーと、なぜ東大生がこの小説を好むのかについてお話しさせてください。
まずは、簡単にストーリーをご紹介します。 ※以下、作品のネタバレがあります。ご注意ください。 物語は、強欲で好色な成り上がりの地主、フョードル・カラマーゾフの3人の息子に焦点が当てられています。 乱暴者のドミートリイ、インテリで理知的なイヴァン、そして純粋で道徳的に正しいことを是とするアレクセイ。 父のフョードルは人を騙し、家族であっても平気で傷つけるような人物ですが、大悪党というわけではありません。ただのダメな父親のように描かれています。
そして3人の息子には、彼の血を継いでいる部分と、彼のことを反面教師にしたような部分があります。例えば、ドミートリイは父親に似ているけれども、小心者なところや、好きな女性には純粋なところがあります。 また、イヴァンは「神などいない」と語る無神論者ですが、そう言い切れない一面もあり、神を信じるアレクセイのことは好ましい人物であると感じています。 一方で神を心から信じているアレクセイは、イヴァンのことを「よくわからない」と思っています。