アラン・ドロン、88歳で生涯を閉じる。伝記と写真で振り返る恋と友情、数々の名シーン
『ル・ジタン』
「ジョゼ・ジョバンニ監督の作品でアラン・ドロンの魅力がフルに発揮されているとは言い難い。でも、当時としては異色の作品だった。それはジプシーを中心に据え、迫害されても誇りを失わず、勇敢な存在として描いている点だ。これは当時のフランス、いやヨーロッパの映画においても異例なことで、この作品によってアラン・ドロンはジプシーのコミュニティにおいて、ある種のアイドルとなった。道義面、そして芸術面でジプシーのために当時動いた唯一のスターだった」
『パリの灯は遠く』
「書くことよりも別な方法で創作活動をしたいと考えていたアラン・ドロンは映画製作に目を向けた。企画を立ちあげる立場になったことで脚本をジャン=クロード・カリエールやパスカル・ジャルダンに頼んだり、自分で監督を選んだりすることができるようになった。この『パリの灯は遠く』もそうした作品のひとつだ。ドイツ軍占領下での対独協力者というテーマは1976年当時、まだデリケートな話題だっただけに、このテーマを取りあげたことは大胆だったし、ジョゼフ・ロージーというフランス語をろくに喋れないアメリカ人監督を選んだことはなおさらだった。しかしながらアラン・ドロンはこの監督の作品、『暗殺者のメロディ』を大変気に入っており、この人選にこだわった。そして時はアラン・ドロンが正しかったことを証明した。この作品はアラン・ドロンの最高傑作の一つとなったからだ。アラン・ドロンはなかなか目ざとい。たとえば『ボルサリーノ』の原作の権利を自ら買い取り、ジャン=ポール・ベルモンドへの出演交渉も自分で行ったこともそうだ。当時、企画にこれほどの発言力のある俳優は他にいなかった。彼のアヴァンギャルドなやり方に俳優仲間は触発され、友人のジャン=ポール・ベルモンドも映画製作に乗りだした」
2019年のカンヌ国際映画祭
「2019年5月19日、アラン・ドロンは第72回カンヌ国際映画祭で長年の功績に対し、名誉パルムドール賞を授与された。これまでにも名誉金熊賞やセザール賞など数々の受賞歴があったものの、世界最大の映画祭であるカンヌは象徴的な存在だ。映画界のレジェンドに与えられるこの賞をもらう資格は十分にあった。1960年の『太陽がいっぱい』以降、ヨーロッパで唯一、国際的なスターであり続けた男優だからだ。しかも近年はスクリーンから姿を消していたにもかかわらず」