アラン・ドロン、88歳で生涯を閉じる。伝記と写真で振り返る恋と友情、数々の名シーン
『太陽が知っている』
「『太陽が知っている』の撮影中に撮られた写真からは、アラン・ドロンとロミー・シュナイダーの仲良しぶりが伝わってくる。映画監督のコスタ=ガヴラスは、ふたりが恋人同士だった頃についてこんな言葉を書き残している。「ふたりはまだ伝説のカップルではないけれど、すでにマジカルなカップルだった」と。ふたりがどれだけ才能にあふれ、どれだけ美しく、強く愛しあっていたかをよく表した言葉だ。別れることになってロミー・シュナイダーは失恋の痛手を味わったが、ふたりの縁は切れなかった。ロミー・シュナイダーは1977年のインタビューでアラン・ドロンのことを、人生でもっとも大切な人、もっとも頼りになる人と語っている。映画『太陽が知っている』にロミー・シュナイダーを出演させるよう交渉したのはアラン・ドロン自身だった。プロデューサーたちは、『プリンセス・シシー』三部作で終わった女優とみなし、モニカ・ヴィッティかアンジー・ディッキンソンの起用を検討していた。だがアラン・ドロンはこの企画から手を引くことをチラつかせてまでロミー・シュナイダーが新たなキャリアを築く手助けをした。この作品出演がきっかけで彼女はクロード・ソテ監督やジョゼフ・ロージー監督と仕事をするようになり、アイコン的存在となった」
カトリーヌ・ドヌーヴ
1982年のロバン・デイビス監督作品『最後の標的』はカトリーヌ・ドヌーヴとの共演2作目である。初共演作は丁度10年前の1972年、ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品『リスボン特急』だった。ふたりの役者に共通するのは徹底したプロ意識、そしてどんなジャンルにも挑戦する姿勢だ。どちらも作家性が強い映画から刑事物、コメディまでこなす。恋愛関係にはならなかったが互いに尊敬しあう関係だった。今日、ふたりはフランス映画界の生ける伝説として輝きつづけ、世界から望の眼差しを集めている」
『サムライ』
「1967年の名作、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の映画『サムライ』は今年の6月28日に修復版が劇場公開される予定だ。フィルム・ノワールの歴史を変えた作品で、その筋立てや独特の様式美でメルヴィル監督は何世代もの映画監督に影響を与えた。アラン・ドロン演じる殺し屋は無表情に見えて、帽子にレインコートというお定まりの服のなかに拠り所を失った現代人の孤独や苦しみを包み隠している。こうして新たな伝説が生まれ、永遠の名作となった。メルヴィル監督とアラン・ドロンはその後、『仁義』や『リスボン特急』でもタグを組み、この3作品はドロン三部作と呼ばれるようになる」