日本で2030年以降に原子力発電ができなくなる「2030年問題」が見えてきた
■これ以上のプルトニウム蓄積は日米原子力協定違反に
核燃料サイクルが破綻した状態でプルトニウムを蓄積し続けることは、この協定における重大な違反にあたり、協定の解除に繋がりかねない。そうなると、そもそも日本の原子力発電事業の前提そのものが成立しなくなる恐れがあるのだ。 つまり、幾度となく繰り返される六ヶ所村の核燃料再処理施設の稼働延期は、プルトニウムの蓄積を回避するための時間稼ぎであり、最初から完成目標など絵に描いたモチに過ぎないという見方ができる。 また、行き場のない使用済み核燃料を中間貯蔵施設を作って蓄えたり、発電所敷地内に「乾式キャスク」と呼ばれる容器にいれて一時保存したりするという動きが活発化しているが、これも単なる時間稼ぎのための手段に過ぎない。
■「原子力2030年問題」の存在を国民に説明しない日本政府
震災後、日本は原子力発電への依存は減らしていく方針であった。しかし、岸田首相が原子力の最大限活用に大きく舵を切り、経済産業省や電力業界は、脱炭素推進、AIの電力需要増大により原発は必須だと主張し、再稼働や運転期間の延長、さらには新増設まで筋道をつけようと躍起になっている。 しかし、この「原子力2030年問題」の存在について全く国民に説明がなされておらず、このまま強引に原子力発電への依存を推し進めることは、原子力そのものの破綻を意味していると言っても過言ではない。 現在、政府は第7次エネルギー基本計画の策定に着手しており、原子力最大活用の前提が組み込まれる見通しだ。しかし、将来の電力供給や脱炭素への対応は喫緊の課題であるにもかかわらず、原子力発電に頼ることは日本のエネルギー転換を遅らせるだけでなく、供給力の維持に寄与し難いものであることは明らかだ。 資源小国の日本にとって、再生可能エネルギーを中心とした電力供給システムへの転換が唯一残された道であることを認識する必要がある。